研究課題/領域番号 |
24591120
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
山田 浩之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00240036)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 動脈硬化 / 肥満 / 脂肪細胞 / 胎児プログラミング |
研究概要 |
母体肥満症における内臓白色脂肪のエピジェネティックな遺伝子発現修飾は、出生児の成人期における肥満やインスリン抵抗性と関連することが知られているが、血管周囲脂肪におけるエピゲネティックな遺伝子発現修飾と動脈硬化形成との関連性については殆ど報告がない。肥満apoE 欠損マウスより産まれたマウス仔(肥満マウス仔)の胸部大動脈周囲脂肪組織に注目し、胎児プログラミングによる血管周囲脂肪組織の表現型変化と動脈硬化進展機序の関連を明らかにし、心血管病予防の新たな治療標的に発展させることが本研究の目的である。高脂肪食を与えた肥満apoE欠損マウスより産まれた8週齢のマウス(肥満マウス仔)に高コレステロール食を12週間投与し、大動脈における動脈硬化形成を検討した。肥満マウス仔における%プラーク領域は、コントロールマウス仔に比べて著明に増大していた(22% vs.11%:肥満マウス仔vs.コントロールマウス仔、P<0.01)。さらに、胸部大動脈周囲脂肪におけるMCP-1および単球・マクロファージマーカー遺伝子(F4/80、CD68)の発現は、肥満マウス仔において有意に亢進していた。肥満マウス仔の血管周囲脂肪組織は、高コレステロール負荷に対する炎症性形質変化が促進されていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肥満母体由来マウス仔(肥満マウス仔)の作製および高コレステロール食負荷後における動脈硬化形成の解析では、予想通りの結果が得られている。また、肥満マウス仔の胸部大動脈周囲脂肪組織の表現型解析においても、高コレステロール負荷後の炎症性サイトカイン発現や単球・マクロファージの集積がコントロールマウス仔に比べて亢進していることが確認された。一方、脂肪先駆細胞の初代培養系における遺伝子発現の解析に関しては、血管周囲脂肪組織から採取される細胞数に制限があり、実験に使用できる十分なマウス数が確保できない状況であるため、その解析が予定より若干遅れている。一方、脂肪移植モデルを用いた血管周囲脂肪組織における動脈硬化進展機序を解明するための予備実験を進めている。高コレステロール食を与えたドナーマウスから胸部大動脈周囲脂肪組織を採取し、レシピエントマウスの腹部大動脈周囲に移植した。1か月後の腹部大動脈における動脈硬化形成は、普通食を与えたドナーマウスから採取した胸部大動脈周囲脂肪組織を移植したコントロールマウスに比べて有意に増大していた。現在、高コレステロール食負荷前の肥満マウス仔から採取した胸部大動脈周囲脂肪組織を用いた移植モデルを作製中である。
|
今後の研究の推進方策 |
肥満マウス仔の血管周囲脂肪組織におけるヒストン修飾、DNAメチル化の解析を今後進めていく予定である。血管周囲脂肪組織には脂肪細胞のほかに種々の血球細胞や線維芽細胞などが存在している。近年、血管外膜には単球・マクロファージに分化するSca-1陽性細胞が多く集積していることが明らかにされた。 我々も免疫染色およびFACS解析により、血管周囲脂肪組織には血球系のSca-1陽性細胞が多く集積していることを確認した。今後は、脂肪前駆細胞及び単球・マクロファージ前駆細胞を対象とした胎児プログラミングによる血管周囲脂肪組織の形質変化について解析を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|