研究課題
基盤研究(C)
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は、我が国の患者数は現在約530万人、2020年には全世界の死亡原因の第3位と社会的・経済的に大きな問題になることが予想される。しかしながら、COPDに関しては、現在のところ対症療法としての薬物治療があるだけで、確立した根本的な治療法がない現状にある。本研究は、抗炎症成分を含有した補助栄養食品による栄養療法と運動療法などから構成される栄養リハビリテーション(栄養リハビリ)というCOPDの新規医療介入方法を構築し、この栄養リハビリの効果を科学的に検証し、さらに、日本において、栄養リハビリの普及を促進するというものである。平成24年度はCOPD全身性炎症の評価、低強度運動療法と栄養補助療法の抗炎症効果、呼吸リハビリの臨床効果の検討を行なうことを目的として研究を行なった。
2: おおむね順調に進展している
市立秋田総合病院呼吸器内科において通院加療を行なっている安定期COPD患者を対象にして検討を行なった。まず、低強度運動を継続中の安定期COPD患者を対象とした経過中の体重減少に関する因子と栄養補給療法の上乗せ効果について検討した。89例のCOPD患者について体重減少に関する因子を重回帰分析した結果、体重の変化率に関して、FFMIと摂取タンパク質量の変化率が有意な正の回帰関係が、IL-8の変化率が有意な負の回帰関係が認められた。次に、栄養補給を追加することで上乗せ効果を認めるか否か、%IBW<110%のCOPD患者36名を対象に無作為に補給群とcontrol群に分類し、介入前と3ヵ月後の諸項目の変化率を比較した結果、栄養療法補給群において体重、タンパク質摂取量、6MWD、WBI、CRQが有意に増加し、MRCと炎症マーカーが有意に低下した。以上の成績は、%IBW<110%の安定期COPD患者に対する栄養補給と低強度運動の組合せが、上乗せ効果として全身性炎症を抑制し運動耐容能と健康関連QOLを改善する可能性が示された(Sugawara, K, et al. Respir Med,106,1526-1534, 2012)。上述の結果は、平成24年度の研究目標を十分に達成しており、研究はおおむね順調に進展している。
平成25年度の研究としては、COPD患者の病態を、呼吸機能および炎症マーカーとしてTNF-α、IL-6、IL-8、IL-18、高感度CRP、代謝マーカーとしてレプチン、グレリンを測定しCOPDの痩せ群と非痩せ群で比較検討する。(渡邊、塩谷)次に、運動療法および栄養療法の単独効果についての検討を行なう、呼吸困難感を指標とした運動療法の効果(佐竹、塩谷)としては、COPD患者において呼吸困難感を指標とした運動療法の検討とメカニズムを明らかにする。続いて、抗炎症作用が証明された成分を含む補助食品を用いた栄養補助療法を行ない、その臨床効果を検討する。(佐竹、佐野、塩谷)運動療法および栄養療法の併用効果の検討としては、栄養リハビリの効果の検討(佐竹、塩谷)に関して、栄養リハビリを実施し、6分間歩行距離(6MWT)、呼吸機能、身体組成、大腿四頭筋筋力、呼吸筋力などの計測に加えて、炎症マーカーであるTNF-α、IL-6、IL-8、IL-18、高感度CRPの測定を行なう。高齢者・重症COPDにおける栄養リハビリの実施としては、高齢者の栄養療法における栄養指導の有効性に関する予備研究(佐竹、塩谷)として、重症COPD患者における、呼吸困難感を指標とした運動療法による肺の動的過膨張の軽減(佐野、塩谷)、栄養リハビリによる運動耐容能(6MWT)、呼吸困難感の改善を検討する(佐竹、塩谷)。
旅費、物品費は次年度に持ち越して使用する予定である。
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理学療法学
巻: 40 ページ: 24-32
J Am Geriatr Soc
巻: 60 ページ: 1580-1582
Respiratoy Medicine
巻: 106 ページ: 1526-1534