研究課題/領域番号 |
24591125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山内 康宏 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (00323585)
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研究分担者 |
幸山 正 帝京大学, 医学部, 准教授 (00302703)
城 大祐 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30376470)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / LIGHT/TNFSF14 / E-cadherin / Vimentin |
研究概要 |
気管支喘息における気道リモデリングは気流制限の難治性病態の形成につながるため、その機序の解明に向けて世界的に研究がすすめられており、リモデリング形成において上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)による間葉細胞は重要な役割をはたすと考えられている。 近年、炎症性病態に重要な役割を果たすLIGHT(TNFSF14)が重症喘息の気道炎症に深く関与し気道リモデリングに影響することが報告されているが、LIGHT自体がEMTに与える影響については、未だ研究されていないため、我々は、LIGHTがEMTに及ぼす影響を検討した。 今年度は、まず、LIGHTが気道上皮細胞に対して、EMTを誘導し形態学的変化を生じるかについて検討した。気道系上皮細胞株として、A549細胞を用いて、LIGHT刺激を0.1, 1, 10, 50ng/mlで刺激を48時間行い、Western blotting法にて評価したところ、上皮系マーカーであるE-cadherinは濃度依存性に抑制され、間葉系マーカーであるvimentinやα-smooth muscle actinやN-cadherinは濃度依存性に増強され、LIGHTが形態学的にEMTを誘導しうることが判明した。 また、細胞内のmRNAレベルにおいても、LIGHT刺激(1, 10, 50ng/ml)にて、E-cadherin mRNAの発現が濃度依存性に抑制され、Vimentinの発現が濃度依存性に増強されていた。また、LIGHTによるEMT誘導の機序において、TGF-βによるEMTで誘導される転写因子であるsnailの発現を検討したが、LIGHTでは、snailの発現が誘導されなかった。 加えて、TGF-βとLIGHTによる併用作用についても検討したところ、LIGHTはTGF-βとの併用にてよりEMTを誘導しうることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LIGHT(TNFSF14)が上皮間葉転換に与える影響に関して、重要なポイントである形態学的な変化をwestern blottingにて確認でき、mRNAレベルにおいてもLIGHTがEMTを誘導しうるが、TGF-βのEMTとは異なり、snailを介さない系であることが確認できた。また、TGF-βとLIGHTとの併用にて、よりEMTを強く誘導しうることが確認できた。間葉系細胞としての機能解析としての収縮能の評価でも、LIGHT刺激でも収縮能が誘導できることが確認できた。 加えて、細胞内伝達シグナル経路に関しても、MAP阻害剤による解析を行うことができ、ERKを介してEMTを誘導していることを確認した。以上より、現時点では、順調な経過で、検討が進められていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
LIGHTによる気道上皮細胞のEMTへの影響について、研究計画書に従い、引き続き検討を進めていく。 特に、LIGHTに対する受容体であるHVEMおよびLTβRについては、気道系上皮細胞での発現を検討して、その受容体のSiRNAを用いて、受容体の発現をknock downした状況でのLIGHTの役割についても検討していくこととする。 また、LIGHTが重症喘息における重要なメディエータであることより、気道上皮細胞からのサイトカイン・ケモカインの産生などによる気道炎症への影響についても検討を進めたい。特に、重症喘息では好酸球に加えて好中球性気道炎症が優位になっていることも示唆されており、EotaxinやIL-8などの気道上皮細胞からのケモカイン産生についても評価を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
LIGHTとTGF-βによる気道上皮細胞でのEMTへの影響について、申請時の研究計画書に基づき、計画を遂行予定である。 加えて、上述のごとく、LIGHTによる気道上皮細胞からのケモカインの産生に関する検討を進めていく。特に、LIGHT刺激によるサイトカイン・ケモカイン産生の機序については、サイトカイン・ケモカインアレイを用いて、誘導されるメディエータを検討し、評価する。さらに、誘導されうる意義的に興味深いメディエータに関しては、別にELISAにて定量的に測定を行い、その産生に関してもmRNAで発現を評価する。また、産生に関わる細胞内シグナル伝達経路の解析についても行い、阻害剤による産生能への影響やWestern blotによるリン酸化の評価を行い、探索・検討する予定とする。
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