研究概要 |
H24年度はラットにmTOR阻害薬を用いて肺気腫様変化が作成されうるか、またその至適用量および期間を決定することを主目的に実験を行った。mTOR阻害薬としてSirolimusを用いた。投与量は同薬を用いた小動物実験の既報を参考とし2mg/kg, 6mg/kgで行った。投与方法は腹腔内注射とし、薬剤の半減期を考慮し投与は6日/週で行った。ラットは通常のSDラット(雄性)を用いた。この第一回目の検討では、2mg/kg, 6mg/kgのいずれも気腔の拡大を生じていた。この気腔の拡大は投与量による差異をあまり認めないため、至適投与量は2mg/kgに決定した。ここまでの検討で一つ問題点が生じた。HE染色におけるSirolimus投与ラット肺に気腔の拡大は確かにみられるが、肺内に炎症細胞浸潤と思われる円形細胞の浸潤が斑状に分布している所見が見られたのである。そこでこの細胞浸潤の正体が何であるのかを検討するために、免疫組織化学的検討を行った。具体的にはCD3, CD20, CD163, vWF, TTF-1の免疫染色を行った。この結果、集簇している細胞はCD3陽性細胞、すなわちT細胞であり、またその集簇は肺内の小血管周囲が中心であることが判明した。 次に投与期間を決定するため、3,6,12週の3期間を作成した。それぞれ、コントロール投与群含め、順にn=5, 5, 4ずつ作成した。結果は12週間にわたって気腔の拡大は形成されるが、気腔の拡大自体は、未だ定量評価は行っていないが、6Wと12Wで著変無いように思われた。また血管周囲への細胞の集簇は週数を経るにしたがって肺全体に分布するように思われた。H24年度に行った検討はここまでであり、概ね予定通りの進捗状況である。
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