研究課題
基盤研究(C)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、糖尿病や心血管疾患などの併存症を伴うことから全身性疾患としての認識が強調されているが、詳細な機序は不明である。アディポネクチン(APN) は、動脈硬化、糖尿病、心筋梗塞に重要な役割をするものと注目されている。興味深いことにAPN KOマウスは高カロリー食により糖尿病や動脈硬化をきたすことからメタボリックシンドロームの鍵分子と考えられることが前田(研究協力者)らにより示された(Maeda et al. Nat Med. 2002)。しかし無刺激においては表現型の報告は見られず、肺におけるAPNの役割は不明であった。そこで我々はAPNの抗炎症作用、血管保護作用や喫煙によるAPNの低下作用に着目し、APN KOマウスを解析した。驚いたことに無刺激下で加齢とともに肺胞構造の破壊や全身炎症性変化(CRP増加)などヒトCOPD類似の病態を呈することを見出した。さらにAPN KOマウスは高齢になると体重減少、筋肉萎縮や骨粗鬆症を呈することも見出した。APN KOマウスでは、APNの持つ血管保護作用が低下することで肺構造が維持できなくなりCOPDに至ることも解明した。最後にAPN KOマウスにAPNを組み込んだAdenovirusの投与により、肺気腫の治療に成功した。加齢とともに進行性の肺気腫だけでなく、全身性炎症、骨粗鬆症、体重減少、筋肉萎縮を合併するAPN KOマウスは全身性疾患としてのCOPDに合致する新たなCOPDモデル動物となると考えられる。そこで本研究では上記成果を発展させて、1)APN KOマウスの表現型解析、2) COPD発症メカニズム解明、3) APNによるCOPDの治療応用の3点について解析した。現在までにAPN KOマウスのCOPDモデル表現型解析だけでなく、アレイによるメカニズム解析を完了した。
1: 当初の計画以上に進展している
1)APN KOマウスの表現型解析、2) COPD発症メカニズム解明、3) APNによるCOPDの治療応用について、計画以上の成果を得ている。(AJRCMB in press)
当初の計画以上の成果を得ているため、さらなるステップに研究を発展させる予定である。
予定通り使用。
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http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed/lab_8/index.html