研究課題/領域番号 |
24591135
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小荒井 晃 東北大学, 大学病院, 助教 (80458059)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / Toll様受容体 / 酸化ストレス / 急性増悪 / ウイルス感染 |
研究概要 |
COPDは罹患率と死亡率の高い疾患であり、その病態解明および制御が重要である。本研究ではCOPD病態におけるtoll様受容体(TLRs)をはじめとする自然免疫の役割を肺構成細胞中、主にマクロファージにおいて明確にすることである。その一つとして喫煙者およびCOPD病態でのマクロファージにおけるTLR3反応性亢進が肺気腫形成に関与する可能性を明らかにするため、以下の検討を施行した。 肺癌疑い患者の手術で得られる肺組織を用い、免疫染色による組織学的検討により、TLR3の発現が肺胞マクロファージにおいて健常者に比し、COPDおよび喫煙者において増強していることを示し、その発現が喫煙歴と正の相関および肺拡散能と負の相関関係を示すことを明らかにした。また、健常者末梢血単核球を分離培養し得られる単核球由来マクロファージを用いて、タバコ煙がマクロファージにおけるTLR3の発現を増強し、タバコ煙がTLR3リガンド刺激によるIL-8およびMMP-9産生が増強され、抗酸化物質であるN-アセチルL-システインにより抑制されることを示した。これらの結果より喫煙はマクロファージにおけるTLR3発現および受容体応答を増強し、好中球性炎症および肺構造破壊機序に関与する可能性を示した(A. Koarai, et al. Respirology 2012)。H25年度は培養細胞、喀痰および手術肺由来のマクロファージを用いて上記病態を確認する予定である。 また、COPDおよびその増悪の病態では気道における粘液過産生の制御は重要であり、上記の病態の気道上皮におけるムチン産生への関与を明らかにするため、我々はヒト気道粘液分泌腫瘍細胞(NCI-H292 cell)を用いて検討するべく、培養系の確立の準備を開始し、H25年度はTLR3リガンド刺激によるムチン産生におけるタバコの影響およびその機序を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の予定に関し、喫煙者およびCOPD病態でのマクロファージにおけるTLR3反応性亢進が肺気腫形成に関与する可能性を明らかにする目的に関し、2012年のRespirologyに報告し、加えて、気道上皮におけるムチン産生に関する検討も平行して開始することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
喫煙者およびCOPD病態でのマクロファージにおけるTLR3反応性亢進が肺気腫形成に関与する可能性を明らかにする目的に関し、喫煙はマクロファージにおけるTLR3発現および受容体応答を増強し、好中球性炎症および肺構造破壊機序に関与する可能性を、Respirology 2012に報告したが、H25年度は培養細胞、喀痰および手術肺由来のマクロファージを用いて上記病態を確認する予定である。 また、COPDおよびその増悪の病態では気道における粘液過産生の制御は重要であり、前述した病態の気道上皮におけるムチン産生への関与を明らかにするため、我々はヒト気道粘液分泌腫瘍細胞(NCI-H292 cell)を用いて、TLR3リガンド刺激によるムチン産生におけるタバコの影響およびその機序(主としてTLR3-EGFR-ERK経路)を検討する予定である。 さらに可能であれば細胞障害時に放出される内因性分子[「ダメージ」関連分子パターン (DAMPs)]としてHMGB1などがCOPDの喀痰で増えていることが示されており、そのCOPD病態への関与を気道上皮やマクロファージ等の肺構成細胞において明らかにするため検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。 TLR3などのリガンド、阻害薬およびIL-8,MMP-9などのELISAキット等の費用に用いる予定である。
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