研究課題/領域番号 |
24591136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
南方 良章 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80295815)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | physical activity / COPD / accelerometer |
研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の日常活動性は、予後と有意な関係を示し、COPD死亡の最大の危険因子とされている。しかし、日常活動性の標準的評価法は現在確立していない。COPD患者の日常活動性評価法確立を目指して、本邦で使用可能な3軸加速度計(アクティマーカー)を用いて、機器の妥当性を検証した。その結果、海外で頻用されている機器との間での再現性が確認でき、雨天、休日を除く3日間のデータを用いることで反復性も確認できた。これにより、COPD患者の代表的活動性を計測する標準法が確立でき、COPD患者の活動性の分析あるいは医療介入による活動性改善効果の評価のための手段を構築することができた。これらの結果は、Internal Medicine誌ならびにRespiration誌に掲載された。 日常活動性は、社会経済状態、人種などにより明らかな差を認める。従って、欧米での報告結果が必ずしも本邦のCOPD患者に適応できるとは言い切れず、本邦独自の分析と評価が必要である。今回確立した評価法を用い、本邦COPD患者の日常活動性の特徴を評価した。その結果、平均活動強度はCOPD患者では健常者に比較し有意に低下していることが確認できた。また、活動強度別の活動時間を分析すると、≧2.0METs, ≧2.5METs, ≧3.0METs, ≧3.5METsのいずれの活動強度においてもCOPD患者で有意な活動時間の短縮が認められ、特に高強度ほど顕著であった。また、70歳以上ではいずれの強度でも活動時間の短縮を認めた。一方60歳代では、高強度の活動時間はCOPD患者において有意な短縮を認めたが、比較的弱い強度の活動時間は健常者と差は認めなかった。従って、日本人COPD患者では、健常者に比較して日常活動性が有意に低下しており、しかも、その低下程度は活動強度に依存していることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、最大の目標であった、日本人COPD患者の日常活動性測定法の確立と、日常活動性低下の特徴の抽出を行うことができたことは評価に値すると考える。特に、日によるばらつきの多い日常活動時間の中から、比較検討可能な代表的活動性を抽出するための条件設定が行えたことは、今後の比較検討には大きな進歩であった。 COPD患者の日常活動性の特徴として、高強度の活動ほどより強く抑制されていることが判明したが、同時に、高強度の活動ほど活動時間は短く、例えば≧3.0METsの活動時間では、健常者47.0±37.0分、COPD患者23.0±20.7分と、いずれも1日のうち極わずかな時間であった。従って、COPD患者の日常活動性改善を目標とした場合、短時間だが低下割合の大きい高強度の活動と、比較的長時間だが低下割合の小さい低強度の活動のいずれをターゲットにするのがより有効であるかについては今後検討を行いたい。 日常活動性規定因子に関しては、患者背景、生理学的因子、運動耐容能、生化学的因子などを含め、次年度以降に検討を行う予定である。また、活動強度により規定因子が異なる可能性もあり、例えば低強度の活動に比べ、高強度の活動の方がより多くの因子によって規定されている可能性なども考えられる。規定因子分析を進めることで、今後明らかすることが可能と考える。 全体としては、初年度の最大の目標は達成できたので、達成度として80%は達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
日常活動性規定因子を抽出するために、日常活動性の指標として、≧2.0METs, ≧2.5METs, ≧3.0METs, ≧3.5METsの活動時間、ならびに≧3.0METs以上の平均活動強度(METs・hr)を用い、各々に対する規定因子を検討する。まず、基礎的因子、生理学的因子と日常活動性の関係を単純線形回帰分析にて検討し、さらに、相関関係の強い因子を用いて多重線形回帰分析を行い、規定因子を抽出する。抽出された因子に基づいて、活動強度別日常活動時間あるいは平均活動強度の標準式を作成する。各強度別に分析を行うことで、各活動強度の意義について分析し、COPD患者の活動性の特徴をより反映しうると思われる活動強度を絞り込む。さらに、生化学的因子(炎症性マーカー、窒素化ストレス)、併存症(心疾患、糖尿病、貧血、肝疾患、鬱状態、骨粗鬆症など)の評価を行い、日常活動性との関係について検討する。 次に、薬物療法、リハビリテーション、運動療法などの医療介入により、どの強度の活動性を改善しうるか、またその改善にどの因子お改善が関与しているかを検討する。この結果、COPD患者の日常活動性改善を目指したより有効な医療介入法を選択することが可能になると考えられる。 また、日常活動性を測定した全COPD患者に対し、本研究最終時期まで(最長で3年間)の増悪回数と重症度を記録し、活動性との関係を検討し、活動性が増悪に及ぼす影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
活動性抽出のために専用の解析用コンピューターを1台購入し、統計処理のため、作図が簡易な解析ソフトであるGraphPad Prism6 日本語版を購入する。生化学的因子の測定のためにTNF-α, IL-8, 高感度CRPのELISAキットを請求する。呼気NO濃度測定のためにNIOX MINOの使用を予定しているが、本体は既に保有しているため不要で、測定用センサーの使用期間は9カ月間のみに限定されているため購入する。
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