研究課題
肥満を伴う喘息患者は重症化・難治化することが多数の疫学的調査で明らかになっているが、その詳細はいまだ不明である。現在、両疾患は社会的・医療経済的に大きな問題であるため、その機序を解明し有効な対応策や新たな治療法を開発することは重要な課題と言える。最近、肥満で認められる全身の慢性持続性炎症がインスリン抵抗性のみならず自然免疫や獲得免疫にも影響を及ぼして多くの疾患の発症や増悪に関与していることが示唆されている。本研究では肥満による慢性持続性炎症と免疫代謝的変化に焦点を絞り、喘息の基本病態である慢性アレルギー性気道炎症との関連性を詳細に検討し、新たな治療のターゲットを見出すことを目的としている。平成24~25年度では、野生型マウスとインスリン抵抗性を示さないガングリオシドGM3欠損マウスの肥満喘息モデルを作成し検討した。GM3欠損喘息マウスでは肥満により気道炎症の増悪を認めないこと、気道炎症の悪化には単に内臓脂肪重量の増加は関係しないことが示され、インスリン抵抗性に関与する因子を含む内臓脂肪組織の機能的変化が肥満による喘息悪化に関与することを明らかにした。平成26年度では、肥満による内臓脂肪組織の機能的変化に関与する因子を調べるため、脂肪組織中の炎症性サイトカイン、アディポカイン、抑制性サイトカイン、自然免疫系サイトカインの遺伝子発現を検討した。その結果、肥満によりアディポネクチンの遺伝子発現は有意に低下し、抗原吸入前後で有意な変化を認めなかったが、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の発現は肥満により抗原吸入後に著明に亢進することを認めた。以上の結果から、肥満による内臓脂肪組織の機能的変化に関与するこれらの因子が遠隔臓器である気道の炎症に影響を及ぼして喘息増悪に関係していると考えられ、喘息治療の新たなターゲットになり得る可能性が示唆された。
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Eur J Pain
巻: 18 ページ: 1471-1479
http://www.tohoku-pharm.ac.jp/laboratory/byotai/index.html
http://www.tohoku-pharm.ac.jp/laboratory/yakuri/index.html