研究課題/領域番号 |
24591140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
青柴 和徹 東京医科大学, 医学部, 教授 (60231776)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | COPD / DNA障害 / 細胞老化 / アポトーシス / 慢性炎症 |
研究概要 |
COPDの病因論には従来からの「炎症発症仮説」と私たちの「アポトーシスと老化仮説」が提唱されているが、今年度の研究においては「DNA障害」をキーワードとしてこの2つの仮説を発展的に統合することを試みた。COPD患者の肺組織の検討から、1) COPD患者では、肺胞細胞(I型上皮細胞、II型上皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞)のDNA障害(リン酸化ヒストンH2AX)が増加していること;2) DNA障害を生じた肺胞細胞では、アポトーシスや細胞老化だけではなく、NF-κBの活性化とIL-6の産生が亢進し、周囲に炎症細胞の浸潤が増加していることが明らかになった。以上の結果から、肺胞細胞のDNA障害(2本鎖切断)が、COPDのアポトーシスと老化だけではなく、慢性炎症の要因として考えられた。これらの研究結果をもとに、私たちはCOPDにおける慢性炎症の成立には従来からの喫煙刺激によるdanger signalだけではなく、DNA障害による細胞老化およびsenescence-associated secretory phenotype (SASP) を生じることが必要であるという考え方を提唱し、新しい仮説として「Danger signal plus DNA damage 2-hit hypothesis for chronic inflammation in COPD」を学術雑誌に公表した。この仮説によれば、COPD患者が高齢者に多い理由や禁煙後も炎症が持続する理由、さらにCOPD患者に発癌が多い理由などについて従来よりも適切な説明が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COPD患者ではDNA障害が亢進していることを明らかにし、その結果に基づいてCOPDの炎症慢性化の機序におけるDNA障害と細胞老化、senescence-associated secretory phenotypeの役割についての新しい仮説の公表に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はCOPDの肺胞病変(肺気腫)の成立機序についての研究を進めたが、次年度は気道病変のモデルとして慢性ナフタレン障害によるマウスモデルを作成し、COPDにおける気道のリモデリングと線維化における分子生物学的機序について検討する予定である。さらに慢性喫煙曝露マウスを用いて、私たちのCOPDにおけるDNA障害仮説の妥当性を検証していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト肺組織を用いた研究については今年度で終了する予定である。次年度使用額については、翌年度以降に請求する研究費と合わせてマウスを用いた実験における試薬と消耗品の購入に充てる予定である。
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