正常気道上皮細胞由来細胞株である16HBE細胞の細胞シートをTranswellチャンバー上に培養し、上皮バリア形成によって増加する遺伝子群と減少する遺伝子群をGeneChipを用いて解析した。変化が見られた遺伝子をGENESPRINGを用いて解析し、さらに、IPAによってそのパスウェイを網羅的に解析した。以前我々は、前回の申請において気道上皮バリアにEGFRを介するシグナル伝達が重要であることを報告しているが、本研究においても同様にEGFRのパスウェイの気道上皮バリア形成において重要であることが改めて明らかになった。次に、同様の実験系を用いて気管支喘息の疾患感受性遺伝子であるPCDH1の上皮バリア形成における役割について検討した。免疫細胞染色法によって観察すると16HBE細胞のPCDH1は細胞間隙に染色され、その発現は上皮バリアが形成されるとともに上昇することが観察されたが、PCDH1のsiRNAによるノックダウン細胞においえは、上皮バリア形成が阻害され、デキストランの細胞透過性が亢進し、さらに経上皮電気抵抗が低下することが観察された。ウェスタンブロット法による解析では、PCDH1には2つのアイソフォームが存在し、さらに、これらのうち膜貫通部分を有するアイソフォームが、上皮バリア形成には特に重要であることが示された。前述の16HBE細胞を用いた上皮バリア形成過程における遺伝子発現の網羅的解析で、最も変動が遺伝子としてNDRG1遺伝子が同定された。NDRG1をノックダウンした細胞においては、PCDH1同様に細胞のバリア機能を抑制することが明らかになった。慢性副鼻腔炎と気管支喘息患者におけるPCDH1とNDRG1の発現は、組織中の気道上皮において低下しており、病因との関連性が示唆された。気道過敏性や好酸球性炎症を示す喘息モデルを確立し、今後の検討に利用可能となった。
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