繰り返される環境因子の暴露による気道上皮細胞機能の変調が、気管支喘息の発症や進展と深く関わっているが、上皮の物質透過を制御するtight junction(TJ)バリアは、気管支喘息患者では健常者より脆弱であることが知られている。我々は気道上皮細胞のバリア形成に、EGFRシグナルが重要であることを過去に申請した研究課題において明らかにし、これを報告している。PCDH1は、喘息や気道過敏性に関係する疾患感受性遺伝子のひとつであるが、その機能は不明であった。我々は、PCDH1の上皮バリア機能への関与を検討し、気道上皮細胞においてPCDH1の発現が上皮バリア形成にともなって上昇すること、siRNAを用いた発現抑制により上皮バリア機能が低下することを明らかにした。喘息患者や慢性副鼻腔炎患者の粘膜上皮におけるPCDH1発現の検討では、炎症巣にある上皮でのPCDH1の発現は低下していた。以上より、PCDH1を介した上皮バリアの機能の制御は、喘息やアレルギー炎症の病態において、重要な役割を担っている可能性が本研究により示唆された。 上皮細胞においては、様々な分子がバリア機能の制御に関係しているが、どのようなmiRNAが気道上皮のバリア機能の制御に関わっているかは明らかでない。そこで我々は、マイクロアレイを用い上皮バリア形成過程で発現が上昇するmiRNAの網羅的解析を行った。その結果、16HBE細胞のバリア形成過程で、mir-155の発現が最も亢進することが観察された。また、Mir-155の過剰発現や抑制は、いずれも上皮バリアの形成を阻害することが明らかになった。Mir-155は、TLR刺激などの外的刺激によって誘導されるため、Mir-155の上皮機能の制御とその破綻は、気道のバリア機能や慢性炎症の制御に重要な役割を担っている可能性があることが、本研究により明らかとなった。
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