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2012 年度 実施状況報告書

吸入性粒子状物質によるアレルギー性炎症の発症機序の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24591145
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪大学

研究代表者

黒田 悦史  大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授 (10299604)

研究分担者 森本 泰夫  産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (30258628)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードマクロファージ / 粒子状物質 / シリカ / アラム / 脂質メディエーター / プロスタグランジン / Syk
研究概要

本研究課題は自然免疫の活性化を基盤に粒子状物質によるTh2型免疫反応の誘導機構を解明することを目的としている。我々はこれまで、結晶質シリカやアルミニウム塩のような粒子状物質がマクロファージを刺激し、炎症性因子であるIL-1βおよびプロスタグランジンE2(PGE2)を誘導すること、さらにPGE2がIgEの誘導に関与することを報告してきた。そこで24年度は粒子状物質によるマクロファージの活性化とPGE2誘導に関与するシグナル伝達経路に焦点をおき、主にin vitroにて解析を行った。
結晶質シリカやアルミニウム塩は細胞内炎症シグナル複合体であるインフラマソームを活性化し、IL-1βを誘導することが知られているが、インフラマソームを欠損したマウス由来のマクロファージにおいてもシリカやアルミニウム塩によるPGE2産生が認められた。種々のシグナル伝達阻害剤を用いてPGE2誘導に関するシグナル伝達経路を解析したところ、Sykの阻害剤によりPGE2産生が強く抑制された。同様の結果がsiRNAを用いたSykのノックダウンにおいても認められた。さらに他の脂質メディエーターであるPGD2やロイコトリエンの産生もシリカやアルミニウム塩の刺激によりマクロファージから誘導されたが、これらの産生もSykの阻害により抑制された。
これらの結果から、粒子状物質による脂質メディエーターの産生誘導にはSykが重要な役割を演じていると考えられ、粒子状物質により引き起こされる炎症反応においてSyk阻害剤が有用であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

in vivoの解析は予定通り終了し、24年度後半には25年度の課題であるin vivoの解析へと進むことができた。25年度の計画にスムーズに移行することができたため、当初の予定以上に進行していると考えている。

今後の研究の推進方策

25年度は当初の予定通りin vivoの解析を中心に行う。
マウスの感作方法として、粒子状物質をOVA共に腹腔内投与(一般的な粒子状物質によるアジュバント活性の評価方法)、または粒子状物質を気管内注入にした後にOVAを曝露(吸入性粒子状物質とアレルゲンの吸入による感作モデル)の方法を用い、in vivoにおいてTh2型免疫反応(アレルギー性炎症)を誘導する。これらの方法において、アルミニウム塩またはシリカをアジュバントとすることでOVA特異的なIgEが増強され、肺の炎症が生じることを予備的実験において既に確認している。
そこで、24年度の研究成果をもとに、粒子状物質のTh2アジュバント活性に重要な候補標的分子(液性因子、脂質メディエーター、シグナル伝達体)を定め、候補標的分子の阻害剤や活性剤を投与することにより粒子状物質のTh2アジュバント活性のコントロール、さらにはアレルギー性炎症のコントロールを試み、最終的には喘息モデルマウスの病態形成のコントロールを試みる。
評価方法として抗原特異的な抗体産生、リンパ節細胞や炎症部位(肺胞洗浄液)のサイトカイン産生(Th1/Th2サイトカイン)、浸潤細胞(好中球、好酸球)の解析や組織における炎症性因子の遺伝子発現などを解析する。薬物(阻害剤/活性化剤)の投与については経口投与、皮下注射、腹腔内投与などで検討し、効果的な投与方法や投与量を検討する。

次年度の研究費の使用計画

<消耗品費> in vivoの実験を中心に解析を行い、以下の経費を必要とする。
・マウス 2千円 x 150匹 = 300千円 計300千円、・培養器具 培養液 2千円x50本=100千円,培養プレート 25千円x4箱=100千円 計200千円、・Cytokine/ PGE2 ELISA kit 50千円 x 6 kit = 300千円 計300千円、・アジュバント/阻害剤 計100千円、・遺伝子実験試薬 酵素類 50千円x2本=100千円 計100千円、・組織染色用試薬 染色液類 50千円,免疫染色用抗体 50千円 計100千円、小計 1,100千円
<旅費>国内外の学会にて本研究成果を発表する。 小計 100千円
合計1,200千円

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Particulate adjuvant and innate immunity: past achievements, present findings, and future prospects.2013

    • 著者名/発表者名
      Kuroda E, Coban C, Ishii KJ
    • 雑誌名

      International Reviews of Immunology

      巻: 32 ページ: 209-220

    • DOI

      10.3109/08830185.2013.773326.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 吸入性粒子状物質によるマクロファージの活性化とシグナル伝達経路の解析2013

    • 著者名/発表者名
      黒田悦史、堀江祐範、森本泰夫
    • 雑誌名

      分子呼吸器病

      巻: 17 ページ: 149-151

  • [雑誌論文] 粒子アジュバントのメカニズム2012

    • 著者名/発表者名
      黒田悦史
    • 雑誌名

      実験医学(増刊)

      巻: 30 ページ: 203-208

  • [雑誌論文] 粒子状物質によるTh2アジュバント効果2012

    • 著者名/発表者名
      黒田悦史
    • 雑誌名

      臨床免疫・アレルギー科

      巻: 58 ページ: 171-177

  • [雑誌論文] アジュバントとしてのアルミニウム塩のTh2細胞誘導機構2012

    • 著者名/発表者名
      黒田悦史
    • 雑誌名

      臨床免疫・アレルギー科

      巻: 58 ページ: 204-209

  • [学会発表] Particulates control immune responses via the production of lipid mediators.2012

    • 著者名/発表者名
      Etsushi Kuroda
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡)
    • 年月日
      20121214-20121216
    • 招待講演
  • [学会発表] Particulates induce macrophage to produce lipid mediators via the Syk activation.2012

    • 著者名/発表者名
      Kuroda E, Ohata K, Coban C, Ishii JK
    • 学会等名
      99th Annual Meeting of the The American Association of Immunologists
    • 発表場所
      Hynes Convention Center (Boston)
    • 年月日
      20120504-20120508
  • [学会発表] 吸入性粒子状物質によるマクロファージの活性化とシグナル伝達経路の解析

    • 著者名/発表者名
      黒田悦史、堀江祐範、森本泰夫
    • 学会等名
      第11回肺サーファクタント分子病態研究会
    • 発表場所
      札幌医科大学記念ホール(札幌)

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公開日: 2014-07-24  

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