研究概要 |
SPC-rtTA & TRE-H2BGFPマウスにドキシサイクリン(DOX)を胎生6.5日から生後14日まで投与すると、肺胞上皮系細胞の核がGFPにより標識されていた。DOXを中止し、2、4、6週間後の肺を観察すると、経時的に大部分の肺胞上皮細胞はGFP標識を失っていったが、6週間後でも標識が核内に残存している細胞群 (LRCs≒肺胞上皮幹細胞)を確認した。 DOX投与を中止後6週間後でも標識を保持している細胞群(LRCs)をフローサイトメトリーにて同定し、上皮幹細胞マーカー候補分子の発現について解析を行った。上皮幹細胞マーカー候補分子(Sca-1, CD34, CD90, c-kit, CD24, α6-integrin, β4-integrin)について、LRCsとGFP標識を失った肺胞上皮細胞(H2B-GFPlow 細胞)を比較解析した所、LRCsではβ4-integrinの発現がH2B-GFPlow 細胞に比し明らかに上昇していた。他マーカーについては両者の細胞群に発現の差異を認め無かった。 セルソーターを用い、LRCsを分離し、マトリゲル・コラーゲン上で培養を行い、増殖能・コロニー形成率についてH2B-GFPlow 細胞と比較検討した。LRCはH2B-GFPlow 細胞に比し、明らかにコロニー形成率が高く、またコロニーの大きさも大きかった。 LRCsの解剖学的位置を確認するため、DOX投与を中止後6週間後のSPC-rtTA & TRE-H2BGFPマウス肺組織切片を作成し、共焦点顕微鏡による観察を行った。これまでの報告(Kim CF et. al; Cell. 2005 121:823など)では、肺胞と細気管支の接合部に気管支肺胞幹細胞(BASCs)が存在すると報告されていたが、LRCsは同部位に特化して局在しているわけでなく、肺胞領域に散在していた。
|