研究課題
骨髄間葉系幹細胞の経静脈投与が、特発性肺線維症のモデルであるマウスのブレオマイシン誘導肺障害を軽減する作用を有することが報告されているが、その機序については十分解明されていない。本年度の我々の研究では以下の事が明らかになった。1.間質性肺炎においては、障害を受けた肺胞上皮細胞から由来する成長因子(TGF-b1、FGF2、PDGFbb等)が、線維芽細胞を分化させ、線維化を形成する。我々はTGF-b1、FGF2、PDGFbbが骨髄間葉系幹細胞のミトコンドリア関連液性因子Stanniocalcin-1(STC1)分泌を強く誘導することを明らかにした。成長因子は、肺胞上皮細胞や線維芽細胞に対しては殆どSTC1分泌を促さなかった。2.rSTC1の経気道投与はブレオマイシン誘導肺障害を軽減すること、骨髄間葉系幹細胞にSTC1遺伝子を導入すると肺障害を軽減する能力が増強すること、骨髄間葉系幹細胞のSTC1遺伝子を阻害すると、骨髄間葉系幹細胞の肺障害軽減能が著しく阻害された。3.rSTC1の抗線維化能は、すでに抗線維科薬として臨床応用されているN-アセチルシステインの数百倍と考えられた。4.rSTC1は肺胞上皮細胞の酸化ストレス、小胞体ストレスを軽減するとともに、障害時の肺胞上皮細胞由来の成長因子(TGF-b1、FGF2、PDGFbb等)の分泌を抑制した。すなわち、肺障害時に誘導される肺線維化誘導成長因子は、骨髄間葉系幹細胞が豊富に分泌するSTC1により阻害され、その結果、肺の線維化が抑制されるものと考えられた。5.これらの作用は、肺胞上皮細胞内のSTC1下流遺伝子であるUCP2を阻害することによりキャンセルされた。これらの所見は、肺線維症に対する新規治療開発に役立つと予想された。
1: 当初の計画以上に進展している
論文投稿のめどが立った。来年度は、論文化および国際学会等での発表に力を入れる予定である。また、産業化も目指したい。
査読のある英文誌に投稿し、多くの人に研究成果を公表する。STC1を用いた間質性肺炎の新規治療を追求するために、産業化および新たな研究費獲得を行っていく。
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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