研究課題/領域番号 |
24591150
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
玉田 勉 東北大学, 大学病院, 助教 (80396473)
|
研究分担者 |
奈良 正之 東北大学, 大学病院, 准教授 (70374999)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 気道粘膜下腺 / パッチクランプ / Toll様受容体 / アセチルコリン / 粘膜免疫 / 電解質分泌 / 一酸化窒素 / Flagellin |
研究概要 |
生体にとって不都合な気道過分泌という現象は繰り返す気道感染に伴って二次的に生じるだけでなく、気管支喘息あるいは慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態増悪の形成に重要な位置を占めていることが注目されてきている。難治性慢性気道炎症疾患において気道過分泌の制御が病態改善をもたらす可能性があるが、気道過分泌を引き起こす詳細なメカニズムは不明である。本研究では、Toll様受容体 (TLR)システムを利用した抗原依存的な気道分泌調節機序が存在しているとの仮説のもとに、以前の研究代表者らの報告を参考に、TLR2, 3, 5, 7, 9の候補サブタイプによる網羅的な解析をすることによってそれぞれの認識抗原によって惹起される分泌調節の臨床的意義を完全解明することを目標としている。今年度は慢性気道感染症においてしばしば臨床的に問題となる緑膿菌の構成成分に注目して研究を遂行した。緑膿菌にはグラム陰性菌由来のLPSおよび鞭毛由来のFlagellinを有し、気道粘膜面ではそれぞれTLR4およびTLR5によって認識され、自然免疫機構の賦活とそれに続く獲得免疫の惹起に寄与していることが知られている。研究代表者は、ヒトに類似した分泌様式を持つブタ気管から単離した分泌腺細胞からの水分電解質分泌の解析を可能にし、低濃度アセチルコリンを用いた生理的条件下と考えられる反応に対する、Flagellinの増強効果を検討した。FlagellinはTLR5との結合を介して生理的分泌反応を増強し、追加分泌として作用し得ることが示された。この反応には細胞内一酸化窒素(NO)合成酵素の活性化が関与しており、かつ細胞内cGMP依存性蛋白リン酸化酵素の活性化も関与していることも示された。本研究によってFlagellinはTLR5によって認識され、分泌腺細胞内NO/cGMP/PKG系が動員されて追加分泌を惹起することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の当初の計画の主体は、気道粘膜に侵入し炎症を惹起する外来微生物の菌体成分を認識するものとして、既に報告されたTLR4以外にTLR2、TLR3、TLR5、TLR7、TLR9を候補として選択し機能解析を行うことであった。実際にそれぞれのリガンドであるPeptidoglycan(PGN)、poly (I:C)、Flagellin、Imiquimod(R-837)あるいはR-848、CpG DNAを用いて解析し、Flagellinの増強効果が確認された。次いでTLR中和抗体あるいは特異的結合阻害剤などで前処理した状態で同様の実験を繰り返し、増強効果/抑制効果が解除されればリガンドと受容体との結合の重要性が証明された。さらには平成25年度に予定していた一部の研究すなわち細胞内細胞内シグナル経路も検討し、NO/cGMP/PKG系が候補として選択できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、TLR5の腺細胞における発現について、蛋白レベルでの発現(免疫蛍光染色法、ウェスタンブロット法)を用いる。次いでmRNAレベルでの発現確認のためRT-PCR法を実施する。Flagellinの分泌増強効果の細胞内メカニズムとして現時点で有力候補であるNO/cGMP/PKG系の関与をさらに確認するために細胞中NOイメージング用蛍光プローブDAF-2DAによるNOの直接経時的測定やcGMPアッセイを行う予定である。これらを推進することで気道分泌異常が深く関与する難治性慢性気道炎症疾患に対する新規治療戦略の確立に寄与することを可能にしたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
|