研究課題
同じ病原菌に感染してもその重症度は個人差があるように、呼吸器感染症の感受性には宿主側因子が重要である。宿主応答が特に重要と思われる細胞内寄生菌のうち、頻度が高く難治化、重症化しやすい非結核性抗酸菌、レジオネラ菌に的を絞り、その応答機構を個体および細胞レベルで解析した。代表的な非結核性抗酸菌であるMAC症の感染防御、宿主応答における、転写因子T-betの役割を検討した。T-bet欠損マウスでは、野生型マウスに比べ肺組織におけるMACの増殖が顕著であり、MAC感染による肺炎症の程度も高度であった。感染後肺組織におけるインターロイキン17の著明な増加が見られた。一方、T-bet高発現マウスでは、MAC感染後の菌増殖は軽度であり、肺炎症の程度も野生型マウスに比べ微弱であった。肺組織ではインターフェロンγ濃度が顕著に増加していた。以上より、T-betにより制御されるTh1/Th17バランスはMAC感染後の菌増殖や肺炎症の程度を決定する重要な宿主因子であることが明らかとなった。転写因子Nrf2の標的分子であり、オートファジー関連因子LC3のアダプター分子であるp62/A170はマクロファージに発現し、環境応答に関与する。p62/A170のレジオネラ感染における役割を検討した。p62欠損マクロファージではレジオネラ感染後のインフラマゾーム活性が亢進し、炎症性サイトカインの産生が亢進した。p62はNLRC4インフラマゾームに直接結合し、同活性を低下させることが明らかになった。p62欠損マウスではレジオネラ感染後の肺炎症が高度であり、肺組織における炎症性サイトカインレベルが増加していた。以上より、p62/A170はインフラマゾームの抑制を介し、レジオネラ感染後の肺炎症を制御する宿主因子であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究の目的に沿って平成24年度、25年度に計画した研究は基本的に終了し、最終年度を待たずして非結核性抗酸菌に関する研究、レジオネラ肺炎に関する研究ともに論文化できたことより、当初計画以上に進展しているものとと自己点検した。
T-bet欠損マウスではMAC感染後にTh17偏移を生じることが明らかになったことより、Th17細胞分化のマスターレギュレーターRORγTとMAC感染感受性との関係を明らかにする。転写因子の相互作用、すなわちMAC感染感受性におけるT-betとRORγTと関係についても明らかにする。これらの研究は平成26年度に行い、論文化の予定である。本研究では転写因子を中心に細胞内寄生菌に対する宿主応答機構を解明してきたが、今後は本研究を発展させ、各種病原微生物に対する宿主応答の鍵因子を同定し、治療標的分子として創薬に応用していきたい。
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European Journal of Immunology
巻: 44 ページ: 1084-1092
10.1002/eji.201344091
Journal of Immunology
巻: 192 ページ: 1707-1717
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