研究課題/領域番号 |
24591157
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡部 聡 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (50529740)
|
研究分担者 |
各務 博 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30418686)
吉澤 弘久 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (50282984)
三浦 理 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70420320)
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80207802)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | tumor immunotherapy / lymphodepletion / regulatory T cells |
研究概要 |
本研究の目的は、予後不良進行期肺癌に対する新たな腫瘍免疫療法を確立することである。化学療法、放射線療法後のリンパ球減少状態では、ナイーブT細胞は弱いT cell receptor刺激であっても容易にエフェクターT細胞に分化可能であることが知られている。我々は、化学療法、免疫抑制細胞除去、ナイーブT細胞養子移入を組み合わせることで、進行期坦癌マウスに強力なTeffを誘導し腫瘍成長を抑えることに成功した。本研究では、腫瘍免疫療法に最適な坦癌宿主のコンディショニング方法を確立し、臨床への応用を目指している。 研究初年度である平成24年度においては、ナイーブマウスから採取したT細胞をさまざまなサイトカイン環境で刺激した。In vitroでの9日間の培養で、T細胞を100-1000倍に増やすことができた。これら刺激後のT細胞はT cell receptorの多様性を保っていた。次にこの刺激後のT細胞をリンパ球減少状態の担癌マウスへ移入した。刺激前のナイーブT細胞と同様に、in vitroで刺激し増殖させたT細胞もエフェクターT細胞に分化し、腫瘍を縮小、治癒させることができた。治癒90日後のマウスは腫瘍を特異的に拒絶可能であり、また治癒90日後のマウスにドナー由来のエフェクターT細胞が存在していた。以上より、本実験系で使用したサイトカイン環境下で増殖させたT細胞は腫瘍抗原を認識可能であり、エフェクターに分化可能であること、メモリーT細胞に分化して長期間宿主に留まることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的は、抗腫瘍免疫療法に最適な宿主、免疫担当細胞のコンディショニングを開発することである。根治の難しい進行期肺癌の治療を考えると、十分な量の腫瘍抗原を認識可能なT細胞を得ること、このT細胞から誘導されたエフェクターが強い抗腫瘍効果を持つこと、また長期間生存し抗腫瘍効果を示すことが必要である。 マウスの系ではあるが、vitroにおけるT細胞のコンディショニング方法(サイトカイン環境)の確立を目指した。本実験系で用いたサイトカイン環境で増殖させたT細胞は多様性を持ち、腫瘍抗原を認識可能であり、エフェクターに分化可能であること、メモリーT細胞に分化して長期間宿主に留まることを証明できた。
|
今後の研究の推進方策 |
マウスの系において、担癌宿主の最適なコンディショニングを検討する。肺癌に使用される抗癌剤を用いて、抗腫瘍免疫をもっとも賦活化する抗癌剤の種類、組み合わせを確立する。これまで使用してきた抗癌剤ではシクロフォスファミドが最も効率よくリンパ球を除去し、強力なエフェクターT細胞を誘導可能であった。パクリタキセルやゲムシタビンといった抗腫瘍免疫を増強することが報告されている抗癌剤についても本実験系で検討する。 また、次年度は患者検体を用いて同様の結果が得られるかを検討する。肺癌患者の末梢血リンパ球を分離し、効率よくT細胞を増殖させるサイトカインの組み合わせを確認する。これら刺激後のT細胞が多様性を保ち、腫瘍抗原を認識可能かについても実験を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
肺癌患者の末梢血リンパ球の表面マーカー解析目的のFACS用抗体として380,000円を計上した。また、腫瘍抗原と共培養したT細胞から分泌されるサイトカインを計測するため、ELISA用plate、抗体、試薬、培養液購入費用を計上した。担癌宿主のリンパ球減少状態におけるエフェクター/サプレッサーバランス、抑制性T細胞の機能を解析するため細胞分離幼児期ビーズ購入費を計上した。
|