研究課題
IgG4関連疾患は、血清IgG4の上昇と病変局所におけるIgG4陽性形質細胞の著明な浸潤を呈する新規の全身性疾患である。申請者らはTh2 優位の免疫反応とリンパ増殖性疾患を自然発症するLATY136F変異マウスが、IgG4関連疾患の動物モデルとして評価可能かについて、その肺病変を検討した(金沢大学との共同研究)。H24年度は肺の病理学的検討を行い、LAT Y136F変異マウスが6-8週目強い肺のリンパ増殖性病変を発症することを確認した。またHE染色、アザン染色、IgG、IgG1染色(ヒトのIgG4に対応)を行い、6週齢での著明な炎症細胞浸潤とそれ以降の週齢での線維化の進行を確認した。またLATY136F変異マウスにプレドニゾロン(PSL)を腹腔内投与し、PSL投与群と生食投与群の病理所見で比較検討を行いステロイド反応性を確認した。これらの結果より、LATY136F 変異マウスは、IgG4関連肺疾患のモデルマウスとなることが確認されたため、H25年度は、本モデルマウスの肺局所におけるサイトカイン産生について検討を行った。その結果、LAT Y136F変異マウスは対照マウスに比して、気管支肺胞洗浄液中の細胞数の増加が認められた。また、LAT Y136F変異マウスは対照マウスに比して、有意に気管支肺胞洗浄液中のTh2サイトカイン(IL-4、IL-13)の高値を認めた。一方、Th1サイトカインであるIFN-は両群で有意差を認めなかった。以上より、LAT Y136F変異マウスの肺の炎症局所でのTh2優位の反応を確認した。
2: おおむね順調に進展している
H24年度は、LAT Y136F変異マウスの肺病変に関して、病理学的検討およびステロイド反応性の評価を行うことができ、IgG4関連肺疾患のモデルマウスとしての特徴についての評価を終えることができた。またH25年度は、肺局所のサイトカイン産生を検討することができ、局所のTh2反応の存在を確認した。以上よりおおむね順調と判断した。
平成26年度は、前年度に行った気管支肺胞洗浄液の解析をさらに進める。具体的には、線維化に関与するTGF-βやアレルギーに関与するケモカインであるRANTESやEotaxinの測定を行う。さらに、免疫染色を用いて、肺組織においてTh1/2サイトカイン、TGF-β、ケモカインの発現の確認および浸潤細胞の同定を行う。また、IgG4関連疾患においては、ステロイド治療が有効であるが、本モデルマウスにおいて、ステロイド投与により、血中および気管支肺胞洗浄液中のサイトカインがどのように変化するかを確認する。なおこれらの実験により得られた知見について学会および学術論文に発表する予定である。
LATY136F変異マウスの生育が若干遅れたため、8-9週齢のマウスを先に全肺洗浄用に使用・解析し、現在線維化評価用および免疫組織学検討用(二重染色など)のマウスを成育中である。そのため、コラーゲンアッセイおよび免疫染色抗体費用に一部残が生じた。LAT Y136F 変異マウスの系統維持および実験用のマウスの飼育のため(常時50匹以上を飼育中である)、その飼育費用として、300千円を予定している。本年度も引き続きサイトカインの解析を行うことから、ELISA解析として270千円を予定している。また免疫染色、組織染色用試薬、抗体・PCR試薬、特殊染色費用として、それぞれ350千円、200千円、500千円を予定している。また、本研究は金沢大学との密な協力体制のもと行っている為、研究の打ち合わせおよび学会での発表のため、旅費として200千円を予定している。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)
Respirology
巻: 18 ページ: 480-487
10.1111/resp.12016
巻: 18 ページ: 332-339
doi: 10.1111/j.1440-1843.2012.02284.x