研究実績の概要 |
結核は人類最大の感染症であり,未だ甚大な健康被害を与え続けている.一方樹状細胞(Dendritic Cell:DC)を介した細胞性免疫は結核などの感染免疫誘導に必須の生体反応である.本研究は,細胞免疫誘導型DCワクチンの結核患者血液における免疫応答を解析することにより,ヒトの結核に対する予防及び治療ワクチンとしての研究基盤を確立することが目的である.入院中の結核患者から採血を行い,単核球を分離しDCに分化させるサイトカインであるGM-CSFとIL-4で培養,その後細胞性免疫誘導型DCを誘導するため,既に健常者および癌患者での誘導性を確認しているTNF-alpha,IL-1beta, IFN-alpha, IFN-gamma, Poly-I:Cを添加培養した.一方通常型DCとしてTNF- alpha,PGE2, IL-1beta, IL-6を添加,同様に培養,培養後フローサイトメトリーにてこれらのDCの表面抗原の発現を確認したところ,双方とも良好に成熟した表面抗原の発現を認めた.次ぎにCD4細胞からの補助刺激としてCD40Lを発現させたマウス腫瘍細胞で刺激, ELISA法にて両DCにおけるIL-12p70の産生を測定したところ細胞性免疫誘導型DCで有意にIL-12p70の産生が認められた.さらに上記で得られた患者血液からリンパ球分画を分離,細胞性免疫誘導型DCまたは通常型DCとともに抗原(ESAT-6)存在下で共培養し,抗原特異的なIFN-gammaの産生をELISPOT法で測定した結果,細胞性免疫誘導型DCで有意に産生能の亢進が認められた.これらより,細胞性免疫誘導型DCは結核患者において細胞性免疫を,より効率的に誘導する有望なワクチンとなる可能性が示唆された.
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