研究課題/領域番号 |
24591162
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
橋本 直純 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (30378020)
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研究分担者 |
長谷川 好規 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20270986)
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キーワード | 肺線維症 / 微小環境 / 線維芽細胞 / 上皮間葉系移行 |
研究概要 |
特発性肺線維症は、fibroblastic fociの病理学的特徴を有する。線維化病変における線維芽細胞は多様な表現型を示すことが報告され、我々は、骨髄由来線維芽細胞や微小血管内皮細胞由来線維芽細胞を同定した。特に、epithelial-mesenchymal transition(EMT)は細胞外マトリックスの過剰産生をはじめとする線維化病変形成に極めて重要な病態であることが解明されている。これらの多様な線維芽細胞が形成する線維化病変は、活性化Ras誘導をもたらす増殖因子刺激(Receptor tyrosine kinase; RTK)、TGFβ過剰産生、そして低酸素状態をもたらしている。EMT誘導にはこれらの共刺激が重要であることも明らかになっているので、その包括的制御は間質性肺炎の治療戦略上きわめて重要なものとなる。しかしながら、これらを包括的に制御する治療戦略はRTK制御の試みにとどまっている。PTENはEMTを誘導するさまざまな刺激を包括的に制御し得る癌抑制遺伝子であるが、今回我々は、さまざまな線維化誘導刺激がPTEN産生制御およびPTEN C末端部位リン酸化によるPTEN活性低下を誘導することを明らかにした。さらに、PTEN C末端遺伝子変異を導入することによりTGFβ誘導EMTを制御して、それに伴う細胞遊走および細胞増殖を効率的に制御することを明らかにした。我々は、PTENのC末端リン酸化部位修飾が直接的に肺上皮細胞悪性表現型獲得に影響を与えるのかを様々なdomain欠損コンストラクトおよびフォスファターゼ欠損コンストラクトを作成してPTENの機能解析を行う予定である。この結果、最適化したPTENの外部導入を構築することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PTENはPhosphataseドメイン、C2ドメイン、C末端リン酸化部位で構成されている。C末端リン酸化修飾が直接肺上皮細胞株の悪性表現型獲得に影響するかを検討するために、各ドメインの欠損コンストラクト、phosphatase活性修飾遺伝子変異コンストラクトを作成した。この結果、蛋白リン酸化への蛋白フォスファターゼ活性を介して肺上皮細胞悪性表現型獲得を効果的に抑制することを確認した。PTENC末端修飾が上皮系表現型の一つであるE-cadherinの無い細胞株においても悪性表現型獲得を抑制した。このことは、同じくE-cadherinの無い線維芽細胞に対してPTENC末端リン酸化部位修飾の遺伝子導入を行うことが可能になれば、線維芽細胞の制御にもつながる可能性を示唆していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後PTEN C末端リン酸化部位制御が微小環境下におけるEMTをはじめとする表現型を制御できるかを検討することが必要であると認識に至った。本年度の研究成果に基づき明らかにすべき課題を確認した。 1. 多様化する組織微小環境下刺激に対応するかどうかを評価するために、低酸素誘導EMTに対する制御効果を今回用いた細胞株で評価する。 2. 作成したPTEN4A導入アデノウイルスの外的投与によるEMT制御効果を評価する。合わせて動物モデルでのin vivo実験を行う。
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