研究課題/領域番号 |
24591164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡 芳弘 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20273691)
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研究分担者 |
高橋 良 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10546865)
武田 吉人 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40452388)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | WT1 / 免疫療法 / がんワクチン / 胸部悪性疾患 / 肺がん / ペプチドワクチン |
研究概要 |
我々ががんに対する免疫療法(ペプチドがんワクチン療法)で用いている改変型WT1-235ペプチドとHLA-A*2402の複合体を認識し、かつ、がん細胞表面に存在する天然型WT1-235ペプチドとHLA-A*2402の複合体をも認識できるT細胞レセプター(TCR)を遺伝子クローニングした。この結果により、改変型WT1-235ペプチドをHLA-A*2402陽性がん患者に投与することによりWT1特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)が活性化されがん細胞を攻撃する分子基盤がより明確に示された。また、このTCRの遺伝子クローニングすることにより、がんに対する免疫遺伝子治療に有用であると考えられるツールを得ることができた。 WT1特異的ヘルパーT細胞を誘導できるWT1-332ペプチドとHLA-DRB1*0501の複合体を認識できるTCRを遺伝子クローニングした。このTCRを発現させたCD4陽性T細胞はヘルパー活性を示すだけでなく、細胞障害活性をも持つことが示された。このような特性を持つTCRを遺伝子クローニングすることにより、前述のTCRと同様、抗腫瘍免疫遺伝子治療に有用と思われる新たなツールを得ることができた。 卵巣がんなどの産婦人科領域悪性疾患に対するWT1ペプチドワクチン第2相臨床試験の結果を集積し、ワクチン開始後にWT1ペプチド特異的なdelayed type hypersensitivity (DTH)反応が陽性化した患者がDTH反応が陽性化しなかった患者よりも予後がよいことを示した。これにより、WT1特異的な免疫応答を誘起することが腫瘍増殖を抑制していることが示唆された。この結果は、本研究課題の標的疾患である肺がんなどの胸部悪性疾患に対するWT1ペプチドワクチン施行の合理性・適合性を示すものであり、胸部悪性疾患に対するWT1ペプチドワクチン治療も継続的に施行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WT1を標的としたがん免疫療法の進展には、in vitro実験系やマウス個体を用いた基礎実験の進展と、がん患者に実際に治療を行う臨床試験の進展の両者が必要である。平成24年度の研究実施計画に記載されたこれらの計画のうち、基礎研究としては、WT1特異的CTLが有するTCRのクローニングならびにその機能解析を成果として論文発表することができた。また、同様に、WT1特異的ヘルパーT細胞に関しても、それが有するTCRをクローニングすることを通じて、WT1特異的ヘルパーT細胞の機能の詳細な解析をすることができ、論文発表することができた。また、臨床研究としては、胸部悪性疾患などに対するWT1ペプチドワクチン治療症例をさらに蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、がん免疫応答の解明につながる基礎的な研究を推し進めるとともに、実際にWT1ペプチドワクチンを患者に投与する臨床試験も継続的に進める。また、その臨床試験で得られた患者検体(リンパ球など)を免疫学的・分子生物学的に詳細に解析し、そこからがん免疫反応メカニズムの解明に役立つ研究成果を導き出す努力を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究試薬や臨床試験用のペプチドなどの消耗品の購入に研究費が必要である。また、情報収集のための学会出張や遠方の他の研究者との研究打ち合わせなどに旅費が必要である。これらを中心に研究費を使用する予定である。
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