研究課題
我々は、以前に、種々の型のHLA class II拘束性に癌抗原WT1特異的ヘルパーTリンパ球を誘導できるWT1-332ヘルパーペプチドを同定した。今回、HLA-DRB1*04:05拘束性のWT1-332特異的ヘルパーTリンパ球がもつT細胞レセプター(TCR)を遺伝子クローニングし解析した結果、そのTCRは今後の研究にも有用な機能的TCRであった。癌抗原WT1特異的cytotoxic T lymphocytes (CTLs)のeffector-memory(EM)分画は抗腫瘍免疫応答において重要な役割を持っていると思われる。我々は急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia: AML)患者末梢血中のWT1特異的CTLのEM分画の細胞(WT1-CTL-EM)をsingle-cell sortし、その遺伝子発現profileをcluster analysisやprincipal component analysisを用いて解析した。その結果、その分画の細胞はその遺伝子発現profileにより、2つの集団(“quiescent”と“activated”)に分かれた。また、寛解期のAML患者をWT1ペプチドワクチンで治療(免疫治療)すると、長期寛解を維持できた患者(responder)のWT1-CTL-EMの遺伝子発現profileは“quiescent”にシフトしていき、対照的に、再発した患者(non-responder)のWT1-CTL-EMの遺伝子発現profileは“activated”にシフトした。AML細胞が残存しているnon-responderでは、WT1-CTL-EMはその残存AML細胞(WT1抗原を発現)からの刺激を受け活性化されており、つまり“activated”であり、一方、responderでは、AML細胞がほとんど残存しなくなっているため、WT1-CTL-EMは残存AML細胞からの刺激はなく、したがって、より“quiescent”な状態になるという推論がなされる。このような、癌抗原特異的免疫動態に関する興味深い知見を得た。この知見は、癌免疫応答や癌免疫療法(癌ワクチンによる免疫治療など)のメカニズムの理解を深めるのに役立つと考えられた。手術不能の胸部悪性腫瘍などの癌患者にWT1ペプチドワクチンを用いた免疫治療を継続的に行った。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
巻: in press ページ: in press
10.1007/s00262-015-1683-7
Anticancer Research
巻: 35 ページ: 1251-1262