研究課題
本研究では、肺がん難治化の大きな要因となっている遠隔転移、特に脳転移に対する有効な新規治療法の開発を目的に探索的な検討を行った。具体的には、1) 肺がん脳転移形成に関与する因子を検索・同定し、それらの因子を標的とした制御法を構築すること、2) また肺がんの脳転移形成過程におけるがん細胞と宿主側因子の間の相互的な応答性を解明し、肺がん脳転移の詳細な分子機構を明らかにすることを目的とした。まず、肺がん脳転移形成における血管新生の関与を検討した。肺がん細胞による実験的脳転移モデルを用いて脳転移巣における種々の血管新生因子の発現を免疫染色にて評価したところ、VEGFをはじめとした血管新生因子が高発現していた。VEGFを発現している肺がん細胞による実験的脳転移形成は血管新生阻害剤の投与により抑制されたことから、肺がん脳転移形成における血管新生の重要性が確認された。また、astrocyteは種々の作用によりがん細胞の脳転移形成を促進することが報告されているが、本検討でも肺がん細胞による実験的脳転移巣の周囲にはGFAP陽性の活性化astrocyteの集簇が認められ、がん細胞の脳転移形成におけるastrocyteの関与が改めて示された。さらに、肺がん細胞による実験的脳転移巣における血管透過性を解析することにより、探索的なナノパーティクル治療における臓器特異的なバイオマーカーとなり得る複数の分子群が特定された。以上のように、本研究では肺がんの脳転移形成を規定する諸因子をがん細胞および宿主側因子の両面から明らかにした。これらの因子を標的とした新規治療法の創薬・開発を推進することにより、肺がん難治化の最大の要因といえる脳転移の制御および克服に繋がることが期待される。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (11件)
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