研究課題
1.Dox投与下にサーファクタントプロテイン(SP)-Dを産生するコンディショナルマウス(iSP-Dマウス)に対し、Dox投与(SP-D産生)あるいはDox非投与(SP-D非産生)下にAlzet mini-osmotic pumpを用いてBLMを1週間かけ持続皮下投与することにより肺胸膜直下に線維化を呈するモデルを作成した。SP-D非存在下ではマウス肺組織中のコラーゲン量ならびに線維化の程度の指標となるAshcrof scoreが有意に上昇しており、BLM誘発肺線維化が増悪することを示した。2.SP-Dと線維化促進に重要な役割を果たしているfibrocyteとの関わりを解明するため、iSP-Dマウスを用いたBLM誘発肺線維症モデルにおいてBLM刺激後の肺組織におけるfibrocyteの数を比較した。マウス肺組織のsingle cell suspensionを用いてコラーゲン1、CD45、CXCR4染色し、FACSにてCol-1+CD45+CXCR4+fibrocyteをSP-D産生マウスと非産生マウスで比較したところ、SP-D非産生マウスにてfibrocyeの数が有意に増加していた。3.BLM刺激マウス肺のsingle cell suspensionをフィブロネクチンコートdishで1週間培養後、接着細胞を回収しCD45によるpositive selectionによりマウス肺fibrocyteを分離しRNAを抽出した。real time PCRを用いてSP-D産生マウスと非産生マウス由来fibrocye間における違いを比較した。BLM刺激マウス由来fibrocyteからのTGF-beta1発現が増加しており、さらにSP-D非産生マウス由来fibrocyteではその傾向が顕著であった。またfibrocyteの肺への遊走に最も重要なケモカインレセプターであるCXCR4の発現がSP-D非産生マウスfibrocyteにて有意に増加していた。SP-Dを介したfibrocyteにおけるCXCR4発現の制御が肺へのfibrocyteの遊走に関わっていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
SP-Dを産生しないマウスではBLM誘発肺線維症が増悪することを証明し、そのメカニズムの一部はマクロファージからのTGF-β、PDGFなどの増殖因子の産生調整作用にある可能性について昨年度の時点で証明できていたが、さらに本年度にはマクロファージと同様に単球より分化し線維化に重要な役割を担っているfibrocyteに着目しSP-Dの有無による違いについて検討を行った。その結果、fibrocyteはSP-D非産生マウス肺において増加しており、さらにfibrocyteの肺への遊走において重要なケモカインレセプターであるCXCR4発現が増加していることが分かった。SP-DがfibrocyteにおけるCXCR4の発現制御を介して肺への遊走を制御している可能性が示唆された。SP-Dはマクロファージのみならずfibrocyteを制御することにより肺線維化を制御している可能性があることが分かった。
今後、in vitroにおけるSP-Dのマクロファージ活性調節作用検討を予定している。in vitroでSP-D存在、非存在下にマウス肺胞マクロファージを培養し、PCR法やELISA法を用いてマクロファージからの増殖因子産生の変化を検討する。また肺線維症におけるfibrocyteを含めた骨髄由来細胞の働きとSP-Dによる調整作用を検討するためにGFPトランスジェニックマウス由来骨髄細胞をSP-Dノックアウトマウスに骨髄移植したキメラマウスを作製する予定である。
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Arthritis & Rheumatology
巻: 66(3) ページ: 560-568
10.1002/art.38263