研究課題/領域番号 |
24591172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
渡辺 正樹 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (90398298)
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研究分担者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30264039)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間質性肺疾患 / 脂質メディエーター |
研究概要 |
本研究は、間質性肺疾患における脂質メディエーターの役割の検討を目的としている。 本年度は、間質性肺疾患モデルの作製および間質性肺疾患における脂質メディエーターの動向について検討した。急性肺傷害モデルは、マウスにリポ多糖を気管内投与して作製した。急性肺傷害モデルのBALFを用いて、代表的な脂質メディエーターであるエイコサノイド (41種類) を測定したところ、コントロール群と比べてトロンボキサン類、プロスタグランジン類、ロイコトリエン類が上昇していることを見出した。エイコサノイドの急性肺傷害への関与を示した報告はこれまで少なく、新しい観点による病態解明と治療法開発に繋がる極めて重要な成果である。 肺に慢性的な炎症と線維化を来たし、有効な治療法のない間質性肺炎についても研究を進めた。間質性肺炎モデルは、マウスにブレオマイシンを気管内投与して誘導した。我々は、アンジオポエチン様因子 (Angptl) に対する免疫染色用の抗体を新たに作製して、マウスおよびヒト間質性肺炎の活動性病変部にAngptlが発現していることを確認した。この結果は、Angptlが間質性肺炎の病態形成に重要な役割を果たすことを意味しており、Angptlは新たな治療標的として期待できる。さらに、分泌性リン脂質分解酵素の間質性肺炎における役割を検討するために、分泌性リン脂質分解酵素遺伝子欠損マウスに間質性肺炎を誘導した。遺伝子欠損マウスは野生型と比較して体重減少や死亡率が高かった。分泌性リン脂質分解酵素は、間質性肺疾患の発症を抑制する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、治療対象となる間質性肺疾患マウスモデルの作製および各種、脂質メディエーターの役割について研究を行った。疾患モデルについては、それぞれリポ多糖、ブレオマイシンを用いて、急性肺傷害、間質性肺炎の病態を安定してマウスに再現する手法を確立できた。疾患モデル、ヒト検体、遺伝子改変マウスを用いて、急性肺傷害においてエイコサノイド、間質性肺炎においてAngptl、分泌性リン脂質分解酵素が重要な役割を果たしていることを見出した。これらの成果から、当初計画した研究目的は現在まで順調に達成しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、主に脂質メディエーター遺伝子欠損マウスを利用して、間質性肺疾患における脂質メディエーターの役割を明らかにする。肺組織や気管支肺胞洗浄液を用いて、炎症性サイトカイン、ケモカイン、マクロファージマーカー、成長因子、シグナル伝達因子などを網羅的に解析することにより、脂質メディエーターを介したネットワークの役割を解明する。さらに、間質性肺疾患患者における脂質メディエーターの動態も検討する。間質性肺疾患患者における血液および気管支肺胞洗浄液中脂質メディエーター濃度を測定して、これらが疾患の早期発見、活動性、病期、予後推測のマーカーになりうるかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、主に遺伝子改変マウスを用いて病態の解析を行う。サスペンションアレイシステムにより、サンプル中のサイトカイン、ケモカイン、成長因子、シグナル伝達因子等を網羅的に解析する。従って、研究費は、これらマウスの繁殖、維持および試薬、器具類の購入に充てる予定である。
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