研究課題/領域番号 |
24591172
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
渡辺 正樹 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90398298)
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研究分担者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30264039)
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キーワード | 急性肺傷害 / 肺線維症 / 脂質メディエーター |
研究概要 |
本研究は、難治性呼吸器疾患である急性肺傷害、肺線維症における脂質メディエーターの役割の検討を目的としている。急性肺傷害および肺線維症モデルは、それぞれリポ多糖(LPS)、ブレオマイシンにより、安定してマウスに再現する手法を確立した。また、急性肺傷害モデルの気管支肺胞洗浄液中では、ロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジン類が上昇していることを見出した。 本年度は、脂質メディエーターに関連する遺伝子欠損マウスを利用して、急性肺傷害、肺線維症における役割を検討した。まず、ロイコトリエンB4第二受容体 (BLT2) 遺伝子欠損マウスにLPSを気管内投与すると、野生型と比べて好中球性気道炎症が重篤化することを確認した。この結果は、BLT2を介したシグナルは急性肺傷害を抑制する作用を有する可能性を示している。次に、分泌性リン脂質分解酵素遺伝子欠損マウスに急性肺傷害および肺線維症を誘導したが、野生型と重症度に差を認めなかった。さらに、血管新生因子アンジオポエチンと類似の構造を持つ分泌タンパク質であり、糖、脂質、エネルギー代謝にも関与するアンジオポエチン様因子 (Angptl) 遺伝子欠損マウスを用いて、急性肺傷害における役割を検討した。Angptl4遺伝子欠損マウスでは、野生型と比べて気管支肺胞洗浄液中の好中球数および総蛋白量が低下する傾向にあった。これらから、Angptl4は急性肺傷害を促進する作用を有する可能性がある。 脂質メディエータの急性肺傷害への関与を示した報告はこれまで少なく、今回、我々が得た知見は、新しい観点による病態解明と治療法開発に繋がる極めて重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は各種、脂質メディエーターの急性肺傷害、肺線維症における役割について、遺伝子改変マウスを用いて検討した。BLT2を介したシグナルは急性肺傷害を抑制、逆に、Angptl4は促進する可能性を見出した。これまで、報告の無い新しい知見を得ることができた。これらの成果から、当初計画した研究目的は、現在まで順調に達成してるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続き脂質メディエーターに関連する遺伝子改変マウスを用いて、急性肺傷害、肺線維症の病態解析を行う。肺胞洗浄液、肺組織、血液等のサンプル中におけるサイトカイン、成長因子、シグナル伝達因子などをサスペンションアレイで網羅的に解析することにより、急性肺傷害、肺線維症の病態における脂質メディエーターを介したネットワークの解明を目指す。
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