研究課題/領域番号 |
24591174
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
赤松 啓一郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60405412)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 好酸球性肺炎 / 窒素化ストレス / サイトカイン / ケモカイン / 成長因子 |
研究概要 |
本研究の目標は、好酸球性肺炎におけるNO 産生と窒素化ストレスの評価である。さらにCalvが好酸球性肺炎の活動性を評価するのに有益なマーカーになり得るかについての検討を行った。健常人、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過敏性肺臓炎、好酸球性肺炎患者のFENO とCalv を測定し、好酸球性肺炎と比較してNO 産生量や部位に差異があるかについて検討した。窒素化ストレスのマーカーとして気管支肺胞洗浄液中の細胞の誘導型NO 合成酵素(iNOS)の発現と、活性窒素種(RNS)産生のマーカーとして3-ニトロチロシン(3-NT)の産生を測定した。上述したマーカーの検討を行うため、抗iNOS 抗体、抗3-NT 抗体による免疫細胞染色を行った。我々が行った予備実験による検討では好酸球性肺炎においてFENO、Calv ともに有意に高値を示し、BALf中に、iNOS 陽性細胞、3-NT 陽性細胞が好酸球性肺炎患者では多くみられた。このことにより好酸球性肺炎では、肺末梢側におけるNO 産生と窒素化ストレスが増強していることが示唆された。また、窒素化ストレスの関連し、我々は、peroxynitriteが線維芽細胞からのmatrix metalloprotease2および9の産生を促進し、気道のリモデリング進展に寄与し得ること、さらにテオフィリンがNF-kBとHDACの経路を介してMMP-2および9の産生を抑制すること、を見出した(Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2012)。さらに、Calvに関連し、気管支喘息において、吸入ステロイドの倍量投与により、Calvが有意に改善することを見いだし、Calvの臨床応用への可能性が示唆された(Respir Investig in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
びまん性肺疾患患者の検体の採取(血清、気管支肺胞洗浄液、呼気凝縮液)、呼気一酸化窒素の測定、呼吸機能検査などおおむね計画通り採取できている。これまでの検討で、好酸球性肺炎においてFENO、Calv ともに有意に高値を示し、BALf中に、iNOS 陽性細胞、3-NT 陽性細胞が好酸球性肺炎患者では多くみられた。このことにより好酸球性肺炎では、肺末梢側におけるNO 産生と窒素化ストレスが増強していることが示唆された。今後、さらに症例数を増やしていく予定であるが、好酸球性肺炎については症例数も少ないため、好酸球性肺炎の病態解明にはさらなる症例数の集積が必要となると考え、やや遅れていると評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、間質性肺炎、好酸球性肺炎患者のFENO、Calv の測定、気管支肺胞洗浄液の採取を行い、データの蓄積に努める。さらに、呼気凝縮液を採取し、炎症性メディエーターの測定を行う。呼気凝縮液はヨーロッパ呼吸器学会のクライテリアに従い、Eco-screen(Jaeger 社)を用いて採取する。アレイシステムを用いて同様に網羅的に検討する。得られた結果は、気管支肺胞洗浄液上清の結果と比較検討し、より低侵襲の検体採取法である呼気凝縮液採取の意義について検討する。上述した方法で同定された炎症性メディエーターはFENO、Calv との相関について検討を加える。さらに呼吸機能との相関を検討することで疾患の病態解明を目指す。推進方法としては、今後は本大学のみならず、関連施設にも症例の集積を依頼し、症例数の増加をはかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、当施設における現有の機器を用いることによって、施行することが可能であるため、新規の機材の購入費は計上しなかった。本研究の目的達成のため、好酸球肺炎、間質性肺炎患者からの血液、気管支肺胞洗浄液、呼気凝縮液を採取する。検体処理のための試薬が必要なため予算を計上した。具体的には、各種一次抗体、呼気凝縮液採取関連経費、サイトカインアレイ試薬、ELISA kit である。
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