研究課題/領域番号 |
24591175
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
蔵田 訓 杏林大学, 医学部, 助教 (00383670)
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キーワード | 肺炎マイコプラズマ / Th17細胞 / サイトカイン |
研究概要 |
肺炎マイコプラズマは原発性異型肺炎の起因菌であり、自己免疫性疾患に類似した多彩な肺外合併症を肺炎に続発する例が報告されている。 一方近年、Th17細胞と自己免疫性疾患との関連についての報告が多くなされている。そこで今回我々は、免疫学的背景が異なるマウスにM. pneumoniae可溶性菌体抗原を反復感作した実験的肺炎モデルを利用して、M. pneumoniae抗原感作がT細胞サブセットに及ぼす影響について検討した。 肺炎マイコプラズマを超音波破砕した遠心上清を可溶性菌体抗原として感作に使用した。C57BL/6系、BALB/c系およびICR系SPFマウスを用いて7日間隔で5回の鼻腔感作後、肺内サイトカインmRNAの定量を行った。 肺炎マイコプラズマ抗原感作により3系統すべてのマウスで肺内IL-17mRNAおよびIL-10mRNA発現の上昇傾向を示したが、対照群と比較して有意な発現が認められたのはBALB/c系マウスのみであった。また最も高いIL-21 mRNA発現レベルを示したのはBALB/cマウスであり、C57 BL/6およびICR系マウスにおいては肺内IL-23 mRNA発現の増加が観察されなかった。 近年、CD4+T細胞やTh17細胞自身が産生するIL-21がTh17細胞の自己増殖に、またIL-23は更なるTh17細胞の増殖と活性化、維持に寄与するとの報告がなされており、肺炎マイコプラズマ抗原の頻回感作がIL-21産生を上昇させることでTh17細胞の活性化に関与している可能性が示唆された。更にIL-21はTfh細胞への分化にも関わっており、ナイーブT細胞のTh17、Tfh細胞への分化とそれらの相互作用がM. pneumoniae 感染症に続発する合併症の病因に関与している可能性が示唆され、その誘導能には宿主の免疫学的背景の関与が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強力な病原因子を保有し宿主に肺炎を惹起する、いわゆる古典的病原体と異なり、肺炎マイコプラズマ感染症の発症機構には過剰な宿主免疫による組織傷害の関与が考えられている。 免疫学的背景の異なるマウスを用いて肺炎マイコプラズマ抗原の反復感作を行ったところ、Th17細胞誘導に重要なサイトカインとして、IL-21の関与が考えられた。更にIL-21はTh17細胞のみならず、Tfh細胞を介して自己抗体が介在する自己免疫疾患発症に関与するとの報告もなされており、これらの相互作用が肺炎マイコプラズマ感染症の発症と増悪に関与している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
マウスリンパ球を分離し、肺炎マイコプラズマおよび他菌種の可溶性菌体抗原、および種々の免疫惹起物質を感作し、その免疫応答を比較するin vitroの実験系を用いて、Th17細胞およびTr1細胞分化誘導の特異性について検討する。また、マウスナイーブT細胞を用いた系を加え、ポジティブエフェクターT細胞のマスター制御遺伝子として働くT-bet、GATA-3およびRORγなどの転写因子の発現について検討することで、マイコプラズマ感染症における宿主免疫応答について、より詳細な解析を行う。
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