マイコプラズマ肺炎および続発する合併症の発症機構には宿主免疫応答の関与が考えられている。近年、自己免疫疾患の発症に関与するポジティブエフェクターT細胞としてTh17細胞の存在が明らかとなっている。一方、過剰免疫応答を抑制するTh3、Tr1などTregについての報告もなされており、マイコプラズマ肺炎および合併症の病態形成にはこれまで唱えられてきたTh1、Th2以外のT細胞サブセットの関与も考えられる。 今回我々は、SPFマウスを用いた実験的マイコプラズマ肺炎モデルに加え、マウス脾臓由来リンパ球を肺炎マイコプラズマ菌体抗原で刺激した実験系を用いてTh17免疫応答について検討した。 M. pneumoniae M129株の可溶性菌体抗原を7日間隔で5回、BALB/cマウスに鼻腔吸入した、また感作抗原量および感作回数を変えた群も同様に作成した。最終感作翌日に解析を行い肺内サイトカインmRNAをリアルタイムPCR法にて定量した。マウスリンパ球を用いた系では、M. pneumoniae菌体抗原、LPS、Zymosanでリンパ球を刺激し、上清中に産生されたサイトカインの定量を行うことで、Th17誘導能の特異性について検討を加えた。 マウス実験的肺炎モデルにおいて、M. pneumoniae抗原量および感作回数の増加に依存して肺内IL-17AおよびIL-10 mRNA発現の上昇が観察された。また、マウスリンパ球を用いた実験系では、M. pneumoniae抗原量に依存したリンパ球の増殖とIL-17A、IL-10の産生増加が観察された。 M.pneumoniae菌体抗原の反復感作がTh17細胞を活性化し、その抑制にはIL-10を産生する細胞の関与が示唆された。また、高濃度のM.pneumoniae菌体抗原感作がマウス脾臓由来リンパ球のTh17細胞への誘導を増強する可能性が考えられた。
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