研究課題
EGFR活性型遺伝子変異を有する非小細胞肺癌(NSCLC)に対するGefitinib (EGFR-TKI)の効果は既知のものであるが、その一部は自然耐性を示し、治療の大きな障壁となっている。一方、癌の微小環境、特に低酸素環境は癌幹細胞性の維持やEMT誘導と密接な関連があり、治療抵抗性に寄与していると考えられる。我々は現在までに、gefitinib感受性NSCLC細胞株であるPC9細胞が低酸素環境においてgefitinib耐性を示すこと、また著明なEMTを引き起こし、EMT誘導因子の中でもZEB1発現が上昇することを確認した。また低酸素環境によりgefitinib曝露後の幹細胞マーカーCD133陽性のDrug-tolerant persisters (DTPs)の比率は著明に上昇すること、またZEB1 knockdownによりCD133陽性DTPsの比率は有意に低下し、低酸素誘導性gefitinib耐性もreverseすることを確認した。またEGFR遺伝子変異陽性NSCLC 18症例のGefitinib治療前および治療後に再発・耐性化後の腫瘍組織を採取し、ZEB1発現を免疫染色で検討している。本研究において、我々はこのgefitinib耐性機序を低酸素環境とCD133陽性DTPsやZEB1の解析を通して詳細に検証し、DTPsを標的としたEGFR-TKI耐性克服の新たな戦略構築を目標とした。
2: おおむね順調に進展している
我々は現在までに、Gefitinibに高感受性NSCLC細胞株であるPC9を用いたIn vitro細胞培養系において、Gefitinib治療後に残存し抵抗性を示すDrug-tolerant persisters (DTPs)は、肺癌幹細胞マーカーCD133や山中因子であるOct4, Sox2などを高発現し、マウスへの高い腫瘍生着率を示す極めて幹細胞性の高い細胞集団であること、また低酸素環境は著明なEpithelial mesenchymal transition (EMT)を誘導し、Gefitinib耐性DTPsの比率を顕著に上昇させることを見出した。そしてEMT誘導因子の中で、転写因子であるZEB1発現が著明に上昇しており、ZEB1遺伝子のknockdownはGefitinib曝露後のDTPsの比率と幹細胞性を有意に低下させ、低酸素誘導性Gefitinib耐性もReverseすることを確認している。またEGFR遺伝子変異陽性NSCLC 18症例のGefitinib治療前および治療後に再発・耐性化後の腫瘍組織を採取し、ZEB1発現を免疫染色で検討している。
現在までの我々の基礎および臨床的検討は、EGFR-TKI耐性におけるEMTや癌幹細胞の関与を積極的に示唆するものと考えるが、EGFR-TKI治療耐性に直接関与しているCD133陽性の幹細胞集団とEMT、そしてZEB1を制御するmicroRNAsとの相互関連、および幹細胞のnicheとも考えられている低酸素環境との関連をさらに網羅的に解析してゆく必要性がある。
当初の予定よりも、耐性腫瘍サンプルの収集が遅れ、発現解析を次年度に行うことになったため。
遺伝子発現解析や免疫染色あるいは追加のマウス実験などに使用予定である。
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Mol Cancer Ther
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