気胸・肺嚢胞を契機にBHD症候群が疑われた日本人Birt-Hogg-Dube症候群(BHDS)患者のFLCN(フォリキュリン)遺伝子検査を継続して行い、診断症例総数は220例を超えた。 現在までの結果をまとめて依然として日本人に多い変異は、exon11のc.1285dupC、exon12のc.1347_1353dupCCACCCT、exon13のc.1533_1536delGATG、次いでexon7のc.765_771delTCCであった。 BHDS症例の気胸手術時に切除される肺組織の一部から11例、原発性肺癌により肺葉切除術を受ける症例の非癌部肺組織の一部からコントロールとして9例、肺線維芽細胞を培養した。これらの肺線維芽細胞を用いて増殖能、遊走能とゲル収縮能を検討した。その結果、増殖能にはBHD症例とコントロールで差はなかったが、コントロールに比べBHDS線維芽細胞の遊走能は有意に低下していた。BHDS症例の肺線維芽細胞におけるFLCNの発現を検討したところ、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析ではコントロールとの間に有意差を認めなかったが、ウエスタンブロット法によりFLCN蛋白量を検討した結果ではコントロールに比べて有意に減少していた。一方、TGF-β、Fibronectin1、COL1A2などの細胞遊走能や接着に関与する遺伝子についてBHDS肺線維芽細胞で有意な発現量の低下を認め、さらにTGF-β、Fibronectinについては培養上清中の蛋白量の減少も確認できた。 ヒト胎児肺線維芽細胞株HLF-1を用いてshRNAによるFLCN遺伝子ノックダウンを行った結果、増殖能には影響はなかったが遊走能が有意に低下する事を確認した。一方、HLF-1に野生型FLCNを過剰発現させると遊走能が亢進したが、変異型FLCNを過剰発現させても変化はなかった。
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