研究課題/領域番号 |
24591181
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
渡部 明子 近畿大学, 医学部, 助教 (40610001)
|
研究分担者 |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
中山 隆志 近畿大学, 薬学部, 教授 (60319663)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 特発性肺線維症 / ヘルペスウイルス(EBV) / ガレクチン9 / 上皮間葉移行(EMT) / M2マクロファージ |
研究概要 |
近年、特発性肺線維症(IPF)の9割にEBウイルス(EBV)を始めとしたヘルペスウイルス感染が報告され、ヘルペスウイルスのIPF発症・増悪化への関与が示唆されている。 IPFは肺上皮細胞の障害に伴う慢性炎症を基盤とする難治性疾患であり、筋線維芽細胞が産生する細胞外基質の過剰沈着を主体とする。この筋線維芽細胞の異常形成にはM2マクロファージの過剰集積および肺上皮細胞の上皮間葉移行(EMT)の関与が示唆されているが、未だその分子レベルでの作用機序は明らかにされていない。 ガレクチン9(Gal-9)は上記肺線維症の発症要因につながるM2促進作用や細胞外基質産生誘導作用を有するβ-ガラクトシド認識結合タンパクである。本研究ではこのGal-9がヘルペスウイルス感染肺上皮細胞に強く発現したことから、マウスγヘルペスウイルス(MHV68)誘導性肺線維症モデルを構築しGal-9の肺線維化における役割を解析している。またEBV感染上皮細胞ではEMTが誘導されるが、EBVのコードするLMP1遺伝子をヒト肺上皮細胞株(A549細胞)に強制発現させた場合もEMTに伴いGal-9が発現されたため、この系を用いEMTにおける機能解析も行っている。 当該年度は肺線維症マウスモデルを構築し、Gal-9欠損マウスにおいてMHV68感染による炎症反応および肺線維化が著しく低下することを明らかにした。今後はGal-9のM2マクロファージ分化誘導能の他、炎症反応・線維化における機能についても詳細に調べていく予定である。さらにEMTのin vitro系ではGal-9 のshRNA処理によりLMP1誘導性EMTが著しく抑えられ、さらにGal-9の単独強制発現によってもA549細胞にEMTを誘導することが分かった。そのため次年度からはGal-9の発現誘導機構並びにEMTを誘導するGal-9の下流シグナルについて検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
IPF患者肺の約7割に感染が認められるEBウイルスのウイルス抗原LMP1は、その過剰発現により肺上皮細胞に上皮間葉移行(EMT)を誘導する。本年度はLMP1の発現により肺上皮細胞から発現誘導されるガレクチン9 のEMTにおける機能解析を行った。その結果、ガレクチン9のshRNA処理によりLMP1誘導性のEMTが著しく抑えられ、さらにガレクチン9の単独強制発現によっても肺上皮細胞にEMTを誘導することが明らかになった。また本年度はヘルペスウイルス感染依存的なIPFの病態発症・増悪化におけるガレクチン9の作用機序を解明するため、マウスγヘルペスウイルス(MHV68)誘導性肺線維症モデルを構築した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はガレクチン9の発現誘導機構並びにEMTを誘導するガレクチン9の下流シグナルのより詳細な分子機構の解析を進める。さらに今年度確立したマウスモデルでは、肺上皮細胞へのウイルス感染を契機とした一連の現象(免疫細胞の動態、上皮細胞のEMT誘導、筋線維芽細胞の浸潤、細胞外基質の過剰蓄積)を経時的に追うことができるため、当初の目的であるM2マクロファージ優位の関連について検討する他、採択年度中に上記イベントにおけるガレクチン9の機能解析も並行して行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
使用予定の内容については初年時と同様、解析を中心として主に消耗品に使用する予定である。
|