研究課題
上皮成長因子受容体 (EGFR) シグナルの下流にあるmTORは蛋白合成,細胞増殖,代謝などの制御に重要な役割を果たしており,悪性腫瘍においてはEGFR-mTOR伝達経路に異常をきたしていることが多い。エベロリムスはmTOR阻害剤であり,いくつかの癌腫においてその抗腫瘍効果が明らかにされている。肺癌細胞株とEGFR遺伝子改変マウスを用いてエベロリムスの抗腫瘍効果を検討した。エベロリムスに対する肺非小細胞癌細胞株の感受性は,A549,H3255,PC-9,RPC-9のいずれもIC50は約0.01μMと、エベロリムスがEGFR遺伝子変異の有無に関わらず有効であることが示唆された。遺伝子改変マウスに5週齢から20週齢まで,エベロリムスあるいは偽薬を10 mg/kg/日 (1回/日,5回/週) 投与し,エベロリムスの抗腫瘍効果を検証した。左肺表面の長径1 mm以上の腫瘍個数 (± SD) はエベロリムス投与群と偽薬群でそれぞれ1.9 ± 0.9 (n = 14) と9.4 ± 3.2 (n = 13) であり,差が認められた(p<0.001)。エベロリムス投与群ではリン酸化S6が抑制されていたが,リン酸化mTORとリン酸化4E-BPは偽薬群と同程度の発現であった。5週齢のマウスを2群に分け,10 mg/kg/日(1回/日,5回/週) のエベロリムスおよび偽薬を投与し続けた。エベロリムス投与群と偽薬群での生存期間中央値はそれぞれ58.0週と31.2週で差が認められた(p<0.001)。エベロリムスはin vitroではアポトーシスとオートファジーを誘導していた。しかしながら,EGFR遺伝子改変マウスにおいてはアポトーシスおよびオートファジーは確認されず,血管新生が抑制されていた。以上より、エベロリムスは腫瘍の血管新生を抑制することにより,活性型EGFR遺伝子変異を有する肺癌への有効性が示唆された。
すべて 2014
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