研究課題/領域番号 |
24591183
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
矢寺 和博 産業医科大学, 医学部, 准教授 (40341515)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 一酸化窒素 / 間質性肺炎 / 完全欠損マウス / 一酸化窒素合成酵素 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究では、呼吸器における一酸化窒素(NO)や一酸化窒素合成酵素(NOS)の役割の解明のため、合計7種類のNOSノックアウトマウス(i、e、nNOS シングルノックアウト、i/e、i/n、e/nNOS ダブルノックアウト、NOS 完全欠損マウス:トリプルn/i/eNOS ノックアウトマウス)を用いて、慢性呼吸器疾患(間質性肺炎、肺気腫、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎、原発性線毛運動不全症、じん肺、慢性下気道緑膿菌感染など)におけるNOおよびNOSの役割を明らかにすることを目的としている。 本研究では、まず、肺線維化をきたすブレオマイシン(BLM)を野生型(wild type; WT)マウスおよび各種NOSノックアウトマウスに投与し、間質性肺炎モデルを作成し、間質性肺炎におけるNOおよびNOSの役割についての検討を行った。結果として、野生型(WT)マウスと比較して、各シングル(i, n, e)NOSノックアウトマウスではWTと比較して肺の線維化については有意な差は認めなかったが、NOS完全欠損マウス(triple NOSノックアウトマウス)では、WTマウスと比較して肺線維化スコア、肺内コラーゲン量の有意な増加を認めた。さらに、triple NOSノックアウトマウスではBLMにより増殖因子であるTGF-β mRNAも有意に増加を認め、NOは肺線維化において保護的な役割を担っている可能性が示唆された。今後、NO donorによるNO補充療法などを用いて、NOにより肺線維化の進行が抑制されるか否かにつき検討を行い、間質性肺炎の病態におけるNOの役割や、治療としてNO供給による間質性肺炎の進行の治療の一助としてのNOの役割についてさらに検討を追加する予定である。 現在、気管支喘息や線毛運動異常におけるNOの役割についても検討中であり、今後2年間をかけて評価、解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、現在、ブレオマイシンを用いた間質性肺炎モデルを作成し、肺線維化におけるNOおよび各種NOSの役割についての検討を行っており、病理組織学的な評価についてはほぼ終了した。これらの結果により、NOの本来の作用として、肺線維化における保護的な役割を担う可能性が示された。今後は病理学的な変化については各種マーカーの免疫染色などによる機序的考察や、NO donorによるNO補充療法を行い、ブレオマイシンによる肺線維化がNOの供給により抑制されるかどうかの評価を行うとともに、NO欠損による肺線維化の増悪の機序についても今後検討を行う予定である。これらの結果は、間質性肺炎における呼吸機能障害進行の機序解明を明らかにするとともに、現在、治療法が十分に確立できていない間質性肺炎の進行を抑制、予防するという治療としての可能性の一助となることが示唆される。 また、上述したように、triple NOSノックアウトマウスを用いた抗原感作により作成した気管支喘息モデルを作成し、病理学的に検討しており、気道分泌や気道の形態学的変化が認められている。また、線毛運動障害についても同様に高速度カメラを用いた検討を行っており、当初の目標であった胞隔炎や気道病変においては予定通り進行していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、平成24年度同様、ブレオマイシンを用いた間質性肺炎モデルを用い、NOの間質性肺炎予防効果における機序について解明を行っていく。また、併せて、気管支喘息モデル、線毛運動障害におけるNOの役割についてまずはその現象について定量的評価を行い、NOがいかに関与しているかについて検討を続けていく予定である。 加えて、今後、当初の目的である、細菌感染免疫や旧性肺障害における各種NOSの関与および機序について、また、肺内でのNOSシステムの代償機序について解明を行っていくべく、さらに検討を予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は昨年同様に、マウスの飼育費用、各種免疫染色用の抗体や試薬、および、ELISA、Taqman probeなどの血清や組織におけるサイトカインなどの定量的評価を行う上での試薬、その他消耗品などの購入に使用予定である。
|