研究概要 |
EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するヒト上皮増殖因子チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)治療は、従来の化学療法より明らかに優れた治療であるが、耐性獲得が問題であった。耐性を克服する方策として、不可逆的EGFR-TKI+EGFR抗体の2者併用が有効であるが、耐性克服の機序はほぼ未解明のままである。本課題では、耐性克服がなぜ可能となるのか?という問いに答えるため、細胞レベルおよび個体レベルで治療モデルを構築し、細胞生物学的に原因を探る。本年度は野生型及び遺伝子変異型EGFR発現細胞系の構築とEGFRタンパク発現安定性の解析を行った。培養細胞株としてEGFRの内因性発現が最少である細胞をスクリーニングしたところK562が最適であることが判明した。そこで、EGFR(野生型、変異型及びEGFR-TKI耐性獲得型)の発現ベクターを作成し、各種EGFR発現系を構築した。レトロウイルスベクターにヒトEGFR遺伝子として、野生型,Exon19del, L858R, Exon19del/T790M, L858R/T790M を導入した。各種EGFR安定発現細胞株に対し、Imatinib存在条件においてGefitinib, Erlotinib, Afatinibによる細胞死を解析した。その結果、GefitinibとErlotinibは野生型のほかExon19del, L858Rに奏効した。一方、L858R/T790MはAfatinibのみ効果があった。一方、抗EGFR抗体であるCetuximabはすべてのEGFRに部分的にしか奏効しなかった。以上の結果から、EGFR-TKIの効果を解析する良い実験系として機能することが確かめられた。
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