研究課題
悪性中皮腫は高齢者に多く、第一選択薬のシスプラチン+ペメトレキセドの併用によっても、平均生存期間は約1年にすぎず、同剤抵抗性となった場合の第二選択薬は知られていない。新規治療法開発は急務であり、本研究ではその遺伝子的特性に基づいた抗腫瘍効果について検討した。同疾患の臨床検体の70から80%ではINK4A/ARF領域が欠損し、一方でがん抑制遺伝子p53は野生型である。すなわち、当該細胞ではp53経路が機能的に欠損しているが、一方でその活性化が可能でもある。そこで、p53遺伝子を発現するアデノウイルス(Ad-p53)を同細胞に感染すると、アポトーシスによる細胞死が誘導された。また同様に、E1B領域の55kDa分子の遺伝子を欠くAdでも、p53発現が誘導されて細胞死が生じていた。第三世代のビスフォスフォネートは、他の種類のヒト腫瘍細胞に比較して、悪性中皮腫に強い細胞障害活性を示すが、この時もp53経路が活性化されていた。そこで、同薬剤とシスプラチンとを併用すると、両者は相乗効果を示した。この時、p53分子に対するsiRNAを用いて、ビスフォスフォネート製剤とシスプラチンとの併用効果を検討すると、上記の相乗効果は消失し、むしろ拮抗作用を示した。Ad-p53とビスフォスフォネート製剤の併用を検討すると、両者による細胞障害活性は相乗効果を示していた。すなわち、ビスフォスフォネート製剤処理によりp53経路の活性化が起こり、それによって、シスプラチンによる感受性を亢進させ、Ad-p53による細胞死をさらに増強すると考えられた。この結果は、上記薬剤等の胸腔内投与による動物実験でも確認された。すなわち、第三世代のビスフォスフォネートは、それ自体で抗腫瘍効果を有しているが、p53経路を活性化でき、同作用によって他のDNA合成阻害剤やp53を発現によるアポトーシスを誘導できると考えられた。
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