研究課題/領域番号 |
24591187
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清元 秀泰 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (00304585)
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研究分担者 |
森脇 久美子 香川大学, 医学部, 助教 (90398040)
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キーワード | 血栓性微小血管炎 / 慢性糸球体腎炎 / PAI-1阻害薬 / ポドサイト / 内皮細胞 / VEGF / ER4G / 抗Thy1.1腎炎 |
研究概要 |
Pristane投与BALCマウス(4週令)より生成したER4GクローンB細胞ハイブリドーマ由来の抗体を用いて、6週令のSDラットに経静脈的なER4G抗体(1mg/kg)注入によって重篤な血栓性微小血管炎(TMA)を誘導した。腎障害は一般的な病理評価に加えWT-1染色、デスミン染色ED -1、PATH染色など免疫染色で腎組織変化を評価した。この動物実験では新たに開発された抗血栓・抗炎症効果の期待できるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)阻害薬を従来からある抗血栓作用のあるクロピドグレルと対比させて検討した。この新しいリード化合物TM5275は東北大学が中心となりin silico解析から合成され、最適されたもので、そのPAI-1阻害効果を調べた。 TMA様の腎炎の発症と進展に関してはTM5275のポドサイトの保護効果を確認した。特に血栓性血小板減少性紫斑病に認められるような内皮細胞障害型TMA様病変は明らかに軽減していた。一方、in vitroのポドサイトに対する効果は非常に弱く、直接的なポドサイト効果を報告するには至っていない。しかし、腹腔内への炎症性マクロファージの浸潤を抑制することができ、この効果がLRP(low-density lipoprotein receptor-related protein)を通じた可能性を見出した。この効果を更に腎炎や血管炎に対して有効性を最大に発揮できるリード化合物のブラッシュアップや最適化を通じて、確実な有効性を発揮する方向で現在、研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pristane投与BALCマウス(4週令)より生成したER4GクローンB細胞ハイブリドーマ由来の抗体を用いて、6週令のSDラットに経静脈的なER4G抗体(1mg/kg)注入によって重篤な血栓性微小血管炎(TMA)を誘導した。血管炎起因の腎障害は一般的な病理評価に加えWT-1染色、デスミン染色ED -1、PATH染色など免疫染色で腎組織変化を評価する体制を整え、クリアランス試験は代謝ケージにて行い腎障害評価モデルとして機能評価した。この動物実験に新開発された抗血栓・抗炎症効果の期待できるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)阻害薬を従来からある抗血小板薬のクロピドグレルと比較した。この新しいリード化合物TM5275は東北大学が中心となりin silico解析から合成され、前臨床段階までに最適されたもので、その臨床応用の可能性を検討した。 TM5275はTMA様腎炎の発症と進展に関し、ポドサイト障害軽減保護効果を確認した。特に血栓性血小板減少性紫斑病に認められるような内皮細胞障害型病変は明らかに軽減していた。一方、動物実験系と並行して分化度の高い培養ポドサイト系を確立し、ポドサイト障害に関与するタンパクの発現調節と薬剤有効性に関して、RT-PCR、ウェスタン・ブロテイング法などによる直接的な効果も検証した。しかし、このin vitro実験系ではポドサイトに対するTM5275の保護効果がきわめて弱く、直接的なポドサイト保護は認めなかった。 そこで、その他の臓器や対象疾患への臨床応用も想定し、無菌性外因的腹膜炎を起こした腹腔内への炎症性マクロファージの浸潤抑制効果を検討した。TM5275を投与すると腹腔内への有意なマクロファージの遊走抑制効果を確認することができ、この効果はLRP(low-density lipoprotein receptor-related protein)を介した反応であることを見出した。現在、抗炎症作用に注目して、リード化合物のブラッシュアップや最適化を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験腎炎に対する効果を判断してTM5275やその他のPAI-1阻害効果はポドサイト特異的障害を軽減する効果でないことが明らかとなったので、ポドサイト特異的障害からcollapsong type FSGSを起こす実験モデルであるNephrin promoter誘導性特異的ポドサイト障害モデル(NEP25マウス)の実験は取りやめ、無菌性腹膜炎マウスモデルを用いて炎症性マクロファージの浸潤抑制効果に対象を変更して、PAI-1阻害と抗炎症作用について検討していく。特に血管内皮細胞と上皮細胞の細胞間のクロストークにおいて、LRP(low-density lipoprotein receptor-related protein)の関与とマクロファージの遊走について検討し、PAI-1活性と炎症性細胞の関与について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者である森脇久美子が結婚に伴い転居し、平成25年に分担を辞退した。それに伴い、当初香川大学で予定していた実験の一部を全て東北大学にて実施し、森脇側で必要であった物品費、旅費など経費が執行されなかったため。 細胞培養試薬一式、リアルタイムPCR試薬、ゲノム解析試薬など購入し、上記研究を推進する。
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