研究課題/領域番号 |
24591188
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
廣村 桂樹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70292597)
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キーワード | 国際情報交換 米国 / ボウマン嚢上皮細胞 / 糸球体障害 / sestrin 2 / mTOR経路 / ネフローゼ症候群 / 蛋白尿 |
研究概要 |
本研究はsestrin 2というmTOR経路を抑制する蛋白がボウマン嚢上皮細胞に強く発現することを我々が見いだしたことより、ボウマン嚢上皮細胞と糸球体障害の関連について、そのシグナル伝達経路の解析を中心に検討することを目的とした研究である。昨年度は動物モデルの検討を行い、巣状糸球体硬化症と微小変化型ネフローゼ症候群モデルを解析したが、今年度は新たに抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)によるラット半月体形成性腎炎モデルの解析を行った。半月体形成は高度な糸球体炎の結果、ボウマン嚢上皮細胞が増殖性変化を示すことで生じるものと考えられている。この半月体形成部位において、sestrin 2の発現は高度に低下し、一方、mTOR下流のリン酸化S6RPの発現が著明に亢進することが観察された。巣状糸球体硬化症や微小変化型モデルでは、非増殖性障害においてsestrin 2の減弱とmTOR経路の活性化がみられたが、半月体形成モデルにおける増殖性病変でも同様の変化が確認されたことより、sestrin2とmTOR経路による複雑は制御機構が想定された。また本年度は共同研究者である米国Shankland博士より供与されたマウス不死化培養ボウマン嚢上皮細胞を用いて、sestrin 2の機能的な検討を開始した。培養ボウマン嚢上皮細胞においても、生体で観察されたのと同様にメサンギウム細胞や糸球体上皮細胞に比べてsestrin 2は強く発現することが確認された。さらにshRNAを用いてsestrin 2の発現を減弱させたところ、mTOR下流のS6RP、4E-BP1、p70S6K のリン酸化が増強することが示され、さらにsestrin 2の減弱によりアポトーシスが増加することを見いだした。以上より、培養ボウマン嚢上皮細胞においてもsestrin 2はmTOR系路を介して細胞の機能維持に重要である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養糸球体ボウマン嚢細胞を用いた検討を行い、培養細胞におけるsestrin 2とmTOR経路の関連について示すことができた。また、新たな動物モデルの解析も施行できた。
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今後の研究の推進方策 |
ボウマン嚢上皮細胞におけるsestrin2-mTOR経路の関連について、動物モデル、不死化マウス培養ボウマン嚢上皮細胞を使用して検討を進めていく。またこれまでの成果をまとめた論文を投稿中であり、reviseとして求められている追加実験を行い、論文の受理を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養関連の費用について、以前、購入した物品が利用できたことや他の研究者との共用もあり、今回は使用額が予定より少なかった。 細胞培養関連の物品などの購入を中心に使用する。
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