研究課題/領域番号 |
24591190
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
矢尾板 永信 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00157950)
|
研究分担者 |
吉田 豊 新潟大学, 医歯学系, 講師 (40182795)
武内 恒成 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90206946)
山本 格 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30092737)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 腎臓 / 足細胞 / 培養 / ヘパリン / 遺伝子発現 |
研究概要 |
腎臓の糸球体の上皮細胞である足細胞は、腎臓の機能維持に重要であり、その傷害は慢性腎不全の原因となる。本研究は、生体内の足細胞と類似した性質をもつ初代培養を用い、より生体内の細胞の性質に近い培養条件を確立することによって、足細胞の研究に貢献しようとするものである。足細胞の初代培養細胞を、ラット単離糸球体から得て、培養初期におけるポドサイトの足突起の消失などの形態変化、特異遺伝子の発現低下(ネフリンは1000分の1、ポドシンは50分の1、ポドカリキシンは60分の1)を確認した。発現低下の著しいネフリン遺伝子の発現量を指標として、過去に報告されている株化細胞のネフリン発現を増加すると報告されている物質を調べたところ、単独で有意に発現を増加させたのは、へパリンのみであった。ネフリン発現を10倍近く増加させるが、ポドシン、ポドカリキシンの発現は高々3倍であった。また、培養系で発現低下のなかったコネキシン43、ネフ1を増加させなかった。このことから、培養による発現低下の程度に応じて、ヘパリンはその発現を上げていることが考えられた。血清を除いただけでもネフリンの発現が2倍以上に増加するが、へパリンの添加は、さらにネフリンの有意な増加をもたらした。このことは、へパリンが直接細胞に作用して、発現の増加をもたらしていることを示している。また、低分子量へパリン、糖鎖構造の異なるデキストラン硫酸でも、同様の効果が認めたれ、硫酸化されていないデキストランでは、有意な効果がみられなかったことから、へパリンの増強効果は、硫酸基を介した陰性荷電の関与が考えられた。以上のことから、ヘパリンを加え、胎仔牛血清の濃度を減少させることによって、より生体内の遺伝子発現状態に近づけることができることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な培養条件、たとえば、ヘパリン、胎仔牛血清、デキサメサゾン、細胞密度、コラゲンやラミニンの細胞外基質、透過性膜の条件が、どのように培養足細胞の形質遺伝子発現に影響するかのデータが蓄積することができ、これはほぼ該当年度の目的を達成できていると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
足細胞の特異的遺伝子ネフリンの発現量をひとつの指標として、培養条件を設定してきた。胎仔牛血清の濃度を下げ、ヘパリン、デキサメサゾンを加えることにより、発現量を10倍から20倍に増やすことが可能となった。しかしながら、通常の培養条件下では1/1000以下に低下するものを1/100~1/50までに回復させることができたに過ぎず、生体内の細胞との間には未だ大きなギャップがある。そのため、本研究費を申請したときの計画に従って、生体内の足細胞に豊富な血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の効果を検討していきたい。予備実験では、培養細胞を採取するときの混入細胞の処理、血清濃度に大きく影響されることが示唆されている。これらの条件を決め、ヘパリン、デキサメサゾン、VEGFの作用機序を、knockdownなどの分子生物学的手法、次世代シークエンサーによるtranscriptome解析を使って探っていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「収支状況報告書」の「次年度使用額」の合計欄が42602円あるが、論文発表に使用する予定であったが、論文作成に予想以上に時間がかかり残ってしまった。次年度の助成金と合わせ、上記に従った研究実験の遂行のために、培養器具試薬(5万円)、動物購入維持(20万円)、RNA抽出試薬(20万円)、cDNA合成試薬(10万円)、RT-PCR試薬(10万円)、遺伝子導入試薬(10万円)、次世代シークエンサー試薬(30万円)、結果発表のため、論文発表(15万円)、国内国外での学会発表(20万円)を計画している。
|