研究課題/領域番号 |
24591190
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
矢尾板 永信 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00157950)
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研究分担者 |
吉田 豊 新潟大学, 医歯学系, 講師 (40182795)
武内 恒成 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究員 (90206946)
山本 格 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30092737)
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キーワード | 足細胞 / 培養 / ヘパリン / ネフリン / 硫酸化 / デキサメサゾン / ポドシン / トランスクリプトーム |
研究概要 |
腎臓糸球体表面を覆う足細胞は、腎臓の機能維持に重要であり、その傷害は慢性腎不全の原因となる。本研究は、生体内の足細胞と類似した性質をもつ初代培養を用い、より生体内の細胞の性質に近い培養条件を確立することによって、足細胞の研究に貢献しようとするものである。これまでに、培養液へのヘパリン添加が足細胞の初代培養細胞において、特異遺伝子(ネフリン、ポドシン、ポドカリキシン)の発現を増強することを明らかにしてきた。この機序は、未だ明らかではないが、糖鎖構造の異なるデキストラン硫酸は同じ効果を認めること、さらに同じ糖鎖構造を持つが硫酸化の低いヘパラン硫酸ではこの効果がないことから、硫酸化の程度に依存することが考えられた。ポドシンの局在を見ると、ゴルジ装置に留まることが多かったが、ヘパリン添加により、in vivoに近似して細胞間に集積することが分かった。ヘパリン添加のみでは、細胞の形態変化は見られなかったが、デキサメサゾンを加えることにより、一次突起に似た構造物が細胞内に認められるようになった。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を加えると単独で有意にネフリンの発現量が増加したが、ヘパリンの効果より少なかった。また、VEGFは有意に培養足細胞の生存に有利に働くことを示すことができた。トランスクリプトーム解析の結果、VEGF受容体であるVEGFR-1、VEGFR-2ではなく、ニューロピリン1,2を介して作用していることが考えられた。以上のように、in vivoんお特異形質に近づく条件を検討していくことにより、足細胞が特異形質を維持するメカニズムへの理解が進んでいくものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、特異性質を失ってしまう培養足細胞がよりin vivoに近い特異性質を持つ培養条件を見つけ出すことにある。そのため、ヘパリン、デキサメサゾン、血清濃度、細胞外基質、成長因子などを一つ一つ検討してきている。現在、ヘパリン、デキサメサゾン、血清濃度、VEGFが効果をもたらすことが明らかになりつつある。これらは、研究当初の目的に合致している。よって、上記の判断が妥当と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
培養足細胞の形質に影響を与えうる因子の検討を続けていく。未だ、不十分なのは、細胞の極性に影響を与える透過性のある膜状での培養、糸球体基底膜に特異的に含まれる細胞外基質の影響、そしてこれまでに分かってきた効果のある因子の組み合わせによる影響である。これらによって、どこまでin vivoの形質に近似できるかが次の目標となる。特に足細胞の基本的な構造である足突起、スリット膜がどこまでできるかがひとつの指標となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画は予定通り進んでいるが、次の実験をするためには、次年度使用額(B-A)では不足するため、完全な実験ができない。そのため、次年度に持越し、実験に必要な消耗品を揃えてから、研究を継続することとした。 次年度使用額(B-A)に加え、平成26年度の交付金から、実験動物代、RNA精製キットを支払い、実験を進める。
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