研究課題/領域番号 |
24591192
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩田 恭宜 金沢大学, 医学系, 助教 (90432137)
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研究分担者 |
和田 隆志 金沢大学, 医学系, 教授 (40334784)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫担当細胞 |
研究概要 |
慢性腎臓病患者の免疫応答異常に骨髄由来免疫担当細胞が関与するという仮説のもとに検討を行った。慢性腎不全により維持血液透析を受けている患者において、インフルエンザワクチン(IV)の反応性を免疫応答の指標とし、その反応性に関わる骨髄由来免疫担当細胞を同定、検討した。IV接種時と接種後1か月で抗体価を評価し、ワクチン反応者と非反応者の末梢血の細胞分画を比較した。HD患者、健常者いずれもH3N2株に対する抗体はIV接種により上昇した。HD患者において、ワクチン反応群は非反応群に比較し、IV接種時のM1 単球/マクロファージ分画は低下していた。M1/M2比、M1/MDSC比は両群で差がなかった。DM合併HD患者群でのIV反応者率は20例中10例、DM非合併HD患者群では15例中4例とDM非合併HD患者群で高い陽性率であった。この2群間では各細胞数に差を認めなかった。これらの結果よりM1単球/マクロファージの分画異常がHD患者のIV反応性に影響することが示唆された。また、炎症促進性/免疫抑制性というバランスが同様であっても、全体としての炎症が活性化していることが免疫応答の機能異常に関与していることが示唆された。この結果は、慢性透析患者の免疫異常を骨髄由来細胞に着目して検討を行ったものであり、新しい視点といえる。これらの結果をもとに臨床応用を考えるとき、骨髄由来細胞を、免疫状態のマーカーとしたり、さらには治療応用の可能性も考えられ、非常に重要な結果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨髄由来免疫抑制細胞は癌免疫分野において、癌の進展、転移に寄与するという報告が多くなされているが、慢性腎臓病における意義は不明であり、我々の研究以外では報告がない。疾患モデルマウスとともに、ヒト検体においても同細胞群の検討を行うことにより、より臨床応用に近づけると考えられる。本研究では骨髄由来免疫抑制性細胞を治療や検査の標的とする点で、これまでにない新たなアプローチ法であり、あらたな検査、治療標的に結びつく可能性のある検討であると考えられる。実際、得られた結果はこれら細胞が慢性透析患者の免疫状態に寄与する可能性を示すものであり、仮説の一部を説明しえたと考えられる。本プロジェクト2年目において、この結果の分子的機序を検討する予定であり、おおむね計画通りに進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の検討においては、単球/マクロファージ分画を単離し、炎症関連遺伝子や、IV反応性に関与すると報告されている分子のmRNA発現を解析する予定である。また、長期の免疫応答異常を評価する目的で、これらの患者の感染症発症率や発がん率と各細胞分画との相関を検討する予定である。またマウスを用いた検討も現在進行しており、骨髄由来免疫抑制性細胞が抗線維化に寄与する知見をえた。現在は抗線維化の分子学的な機序について解析を進めている段階である。これまでの検討をさらに発展させることにより、ヒトにおいては疾患活動性や治療予後、免疫応答異常との相関を検討する。またマウスにおいては腎局所および全身合併症に対する抗炎症・抗線維化を目指した細胞治療の可能性を検討する。これらの研究の成果により骨髄由来免疫抑制細胞が進行性腎疾患に対する新たな診断・治療の標的因子となり、ひいては本検討が慢性腎臓病の進展及び合併症予防につながるプロジェクトになりうると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の予算執行にあたり、抗体などがメーカーのキャンペーン価格で購入できたため、節約が可能であった。 これら得られた結果をさらに詳細に検討するの目的で、実験試薬を購入する。具体的には、患者末梢血より単球を分離して、mRNAの発現を検討する目的で細胞分離用ビーズ、核酸分離用試薬、cDNA合成酵素、またリアルタイムPCR用プライマー、酵素などを購入する予定である。また得られた知見を発表するための学会参加費・旅費として使用する予定である。また、成果報告のため論文出版費用なども必要になるため、本年度の研究費の残金を次年度に使用することとした。
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