研究課題
今年度は糖尿病性腎症の発症・進展における腎固有細胞の炎症動態の解明に焦点をあて、研究を進めた。糖尿病性腎症は、慢性透析となる原因疾患の第一位であり、その病態解明は喫緊の課題であるが、いまだ詳細は不明である。糖尿病性腎症の発症・進展には、高血糖による腎内環境から生ずる慢性炎症が関与していると考えられている。しかしながら、高糖に対する腎固有細胞の反応動態については未だ詳細は不明である。本検討では、高糖刺激(HG)した培養メサンギウム細胞(MC)と尿細管細胞(TEC)において、炎症関連遺伝子に着目し、包括的に解析することで、糖尿病性腎症の慢性炎症における意義を検討することを目的とした。培養ヒトMCとTECを、HG刺激下に24時間培養した。分離したmRNAを調整後、次世代シーケンサーにて包括的遺伝子解析を行なった。さらに炎症に関連する細胞内シグナル伝達分子のリン酸化を検討した。HGによりMCにおいてinflammasome関連遺伝子、さらにmammalian target of rapamycin (mTOR)関連遺伝子の発現亢進が認められた。また、両細胞においてinflammatory cytokine/chemokine関連遺伝子の発現が亢進した。細胞内シグナル伝達分子に関してはinflammatory cytokine/chemokine関連分子のリン酸化の亢進と、Th2関連分子のリン酸化の低下が認められた。HG刺激化でのMCとTECにおいてInflammatory cytokine/chemokine遺伝子とシグナル伝達関連遺伝子の発現亢進とTh2関連遺伝子の発現低下を認めた。糖尿病性腎症においてはHGにより腎固有細胞が炎症促進性に働き、病態に関与している可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は、慢性血液透析患者のインフルエンザワクチン反応性における末梢血骨髄由来細胞の意義について検討した。今年度は、上記の如く、糖尿病状態における腎固有細胞の炎症状態を評価し、後述のごとく、論文として発表した。計画通りの進捗状況であり、順調に進展しているといえる。
慢性血液透析患者のインフルエンザワクチン反応性における末梢血骨髄由来細胞の意義について、末梢血よりRNAを抽出し、炎症関連分子の遺伝子発現解析を行う。また、この結果を論文として発表する予定である。
試薬、抗体などがメーカーのキャンペーン価格で購入できたため、節約が可能であった。今年度に得られた結果をさらに詳細に検討するの目的で、実験試薬を購入する。具体的には、mRNAの発 現を検討する目的で細胞分離用ビーズ、核酸分離用試薬、cDNA合成酵素、またリアルタイムPCR用プライマー、酵素などを購入する予 定である。また得られた知見を発表するための学会参加費・旅費として使用する予定である。また、成果報告のため論文出版費用など も必要になるため、本年度の研究費の残金を次年度に使用することとした
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