【目的】維持透析患者の死因の第2位が感染症であり、予後を考えるうえで免疫応答の異常は重要な意義を持つ。一方、骨髄由来免疫担当細胞が炎症促進、および免疫抑制にも働き、全体の免疫応答を制御することが近年明らかとなっている。本検討では、維持血液透析(HD)患者のインフルエンザワクチン(IV)の反応性を免疫応答の指標とし、その反応性に関わる細胞分画を明らかにすることを目的とした。 【方法】対象は糖尿病(DM)を合併したHD患者15例、DM合併のないHD患者20例、健常者21例とした。IV接種時、および1か月後に抗体価を測定した。同時期に末梢血における炎症促進系(M1)マクロファージ(M)、免疫抑制系(M2) M、myeloid derived suppressor cells(MDSC) 、およびregulatory T細胞を解析した。それらの細胞率をワクチン反応群と非反応群で比較した。 【結果】HD患者、健常者いずれもH3N2株に対する抗体はIV接種により上昇した。HD患者において、ワクチン反応群は非反応群に比較し、IV接種時のM1 M分画が低下していた。M1とM2の比、M1とMDSCの比は両群で差がなかったDM合併HD患者群でのIV反応者率は20例中10例、DM非合併HD患者群では15例中4例とDM非合併HD患者群で高い陽性率であった。この2群間では各細胞数に差を認めなかった。 【結語】HD患者におけるIVの反応性は健常人と同等であった。M1 MがHD患者のIV反応性に影響することが示唆された。
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