研究課題
1) 腎固有細胞培養実験: 前年度にヒトメサンギウム細胞においてARBであるテルミサルタンがPPAR-d作用を有し抗炎症・抗線維化作用を発現することを見出した。ヒト近位尿細管においても、テルミアルタンはPPAR-d活性を有し、同活性依存性にp38MAPK/HSP27経路を阻害してTNF-a刺激性のVEGF-C発現を抑制することを見出した。2)マウス実験: 前年度の実験で、糸球体障害モデルとして、PPAR-a欠損(KO)マウスと対照マウス(S129)にドキソルビシン(10mg/kg)の2回注射(2週間間隔)を実施したところKOマウスにおいて投与後5-7週で蛋白尿(g/Cr)が有意に高値であった。この結果を踏まえて、今年度はドキソルビシン1,3,10mg/kgを1回注射としてKO群とS129群で蛋白尿、腎機能を比較した。1, 3mg/kgでは両群に有意差を認めなかったが、10mg/kgでは、KO群で3日、4日、7日、2週、3週、4週後の蛋白尿と4週後の血清Cr, BUNが有意に高値であった。また、腎組織(PAS染色)ではKO群で増殖・硬化を呈する糸球体の比率がS129に比して有意に高値となった。さらに、糸球体上皮細胞の特異的マーカーであるポドカリキシンの尿中排泄量(mg/gCr)はKO群で3日、4日、7日、2週後に有意に高値となったが、3週、4週後には逆に有意に低値を示した。この所見から、KO群では早期に上皮細胞障害が発症し、その後上皮脱落による不可逆的な上皮喪失をきたすこと、一方、S129群では上皮細胞障害が軽度で上皮喪失も軽度であることが判明した。PPAR-dの組織特異的な欠損マウスについては、Neph-CreマウスとPPAR-d-loxPマウスを交配し、糸球体上皮細胞特異的欠損マウスの作出が進行中である。
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Clin Nephrol
巻: 未定 ページ: 未定
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