研究課題/領域番号 |
24591198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永森 收志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90467572)
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研究分担者 |
大垣 隆一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20467525)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トランスポーター / シスチン尿症 / 再構成系 / プロテオミクス |
研究概要 |
シスチン尿症(OMIM220100)は、腎近位尿細管のシスチン再吸収不全により生じる常染色体劣性の遺伝性疾患であり、rBAT(補助サブユニット)とb(0,+)AT(活性サブユニット)の二つのタンパク質からなるヘテロ二量体型シスチン輸送体の変異により発症するが、さらに未知のトランスポーターの関与が示唆されてきた。本研究は、b(0,+)ATと同じファミリーに属するトランスポーターSLC7A13が長年不明であったrBATの第二の結合パートナーであり、尿細管シスチン再吸収に寄与するものであることを実証して、シスチン尿症の新規原因遺伝子候補を提示することを目的とする。平成24年度は、プロテオミクスを用いて明らかにした、SLC7A13がrBATと結合して輸送機能を獲得することを実証するために、培養細胞発現系でのSLC7A13とrBATのヘテロ二量体化、その細胞膜への局在、および輸送活性と基質特異性の解析を行った。さらに高効率に二量体の細胞膜局在が可能な培養細胞系を得るために、安定発現細胞を作製し、両者が複合体として発現する細胞株を選択した。この安定発現細胞を用いてSLC7A13の輸送基質特異性を解析した。さらに、細胞の内因性のアミノ酸輸取り込み能による影響を完全に除外した状態で、正確な輸送機構を解析する目的で、精製タンパク質を用いたプロテオリポソーム再構成法による活性解析系を確立した。SLC7A13-rBAT複合体を安定発現株より精製し、プロテオリポソームに再構成し、輸送機能を得た。これを用いて、SLC7A13の輸送キネティクス、基質特異性、イオン選択性を詳細に解析した。さらに抗体染色を行い、SLC7A13とrBATの共局在を明確に示し、SLC7A13が長年不明であったS3分節におけるrBATの結合相手であることを結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した項目については、ほぼ計画通りに達成した。交付申請書に記載したように再構成系を用いた基質結合能を指標にした機能解析系ではなく、さらに難易度が高くかつトランスポーター本来の機能を検出することが可能な、再構成系による輸送活性の解析に成功し、詳細な輸送キネティクスの解析を行った。これにより、明らかにSLC7A13-rBAT複合体にシスチン輸送活性があることを突き止めた。さらに共同研究によりrBATおよびb(0,+)ATの欠損マウス、ダブル欠損マウスの腎臓から刷子縁膜小胞を調製し、抗SLC7A13抗体を用いてウエスタンブロット解析を行った。その結果、rBATが存在しないときにSLC7A13の発現が見られなくなることが示された。これにより、in vivoにおいてSLC7A13とrBATがヘテロ二量体を形成していることが証明された。また、Superresolution Structured Illumination Microscopy(SR-SIM)を用いることにより、SLC7A13の局在を詳細に解析した。 本年度、本研究により明らかになった事実から、尿細管シスチン輸送機構の長年のパラドックスが解決され、尿細管物質輸送生理学に新たな展開がもたらされることがより現実的になった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の細胞系での輸送解析、精製複合体を用いた活性解析に加え、SLC7A13単一の活性を評価するため、SLC7A13精製タンパク質を再構成したプロテオリポソームで輸送活性を測定する。複合体形成時とトランスポーター単体での活性における差異の有無を明らかにする。すでに予備的検討により、示唆されている他のトランスポーター因子との超複合体形成の生成機構をあきらかにし、超複合体形成における機能共役について解析を進める。また、それらのトランスポーターとの複合体形成の意義をあきらかにし、生体における役割を解明する。 また、安定同位体標識合成ペプチドを用いたタンパク質の絶対定量が可能な定量質量分析計 AB SCIEX QTRAP 5500のMRM(multiple reaction monitoring)モードで解析し、腎臓におけるrBAT、さらにはSLC7A13、b0,+ATを絶対定量する。さらに、SLC7A13の発現量に雌雄差があることから、その詳細に解析し、生理的意義を解明する。 rBATおよびb(0,+)ATの欠損マウス、ダブル欠損マウスを用いて、尿中のアミノ酸を含む漏出物質の解析を進める。メタボリックケージを用いて野生型および遺伝子改変マウスの24時間尿を採取し、尿中アミノ酸をHPLCおよびLC-MSによって定量解析することで、シスチンおよび他のアミノ酸の変動を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞系での輸送解析、精製タンパク質を再構成したプロテオリポソームを用いた活性解析のために、放射性同位体標識アミノ酸を購入する。特に放射性標識シスチンは高価であるため、消耗品費のうちの大きな割合を占める。また、タンパク質の精製、再構成には、界面活性剤、脂質を大量に使用する。これらの実験に必要な、精製用レジン、細胞培養用培地、プラスチックも購入する。タンパク質の絶対定量のために、安定同位体標識合成ペプチドを合成し、使用する。その他、高価な質量分析用試薬など消耗品を購入する。質量分析計使用料、アミノ酸分析費用なども計上している。実験動物を使用するため、動物購入費用、動物飼育費用、動物実験施設使用料などが必要になる。研究活動を効率よく進めるため、研究期間の大半において実験補助者を雇用する。また、研究成果の発表のため、国内及び海外の学会に出席する。
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