研究課題
移植腎機能低下の主因は急性拒絶反応であり長期腎予後に影響する。早期診断には血清クレアチニン以外の鋭敏な感度と特異度をもつ有用な組織・尿中バイオマーカーが必要である。今まで、組織学的には傍尿細管基底膜に陽性反応を示すC4dが抗体関連拒絶を示唆する組織学的マーカーとして有用とされてきたが、このC4dはABO不適合腎移植症例を初めてとして非特異的に沈着する場合もあり、必ずしも有用なマーカーと言えなかった。拒絶反応は、一種の炎症反応であり、炎症局所で産生されるpentraxin-3 (PTX-3)に着目し、その急性拒絶反応発症時の腎組織内のPTX-3の発現と尿中排泄の有無を検討した。結果として、0時間生検における正常組織においては、PTX-3の発現は組織学的にみられず、急性拒絶反応発症例の組織では、PTX-3陽性エリアが尿細管間質組織の5%以上の領域に認められた。PTX-3は腎間質に浸潤する炎症性細胞と間質の膠原線維上に陽性反応が認められた。また、ボーターライン症例でも、5%以上の尿細管間質組織に陽性反応を示す症例は、その後に拒絶反応を発症し腎機能悪化がみられることを証明した。次に尿中PTX-3濃度の測定を試みたが、拒絶反応発症例と非発症例で有意差はみられなかった。血中レベルも拒絶反応例で上昇はみられなかった。その理由として、ステロイド薬や免疫抑制薬の影響も推測された。腎組織PTX-3の発現は早期急性拒絶反応の診断マーカーとして有用であると考えられた。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
日本臨床腎移植学会誌
巻: 4 ページ: 1-4
Internal Medicine
巻: 54 ページ: 1-5
10.2169/internalmedicine.54.3815