オートファジー(Autophagy)は酵母において発見された細胞の生存維持機構の一つである。腎構成細胞や動物実験モデルでの報告は増加しているが、ヒト腎疾患におけるAutophagyの意義については明らかではない。本年度は、ヒト腎組織を電子顕微鏡で評価し腎疾患の進展におけるAutophagyの意義を明らかにする目的で以下の検討を行った。電子顕微鏡で腎生検組織126例 (MCNS:38例、膜性腎症:32例、IgA腎症:21例、ループス腎炎10例、その他:25例)のPodocyteでのAutophagyを観察し、その頻度を半定量化する事により臨床検査データとの検討を行った。年齢に伴いPodocyteのAutophagyの増加が見られた (p = 0.0049)。MCNSにおいては足突起融合率 (r = -0.477、p = 0.002)、蛋白尿 (r = 0.410、p = 0.013)と有意な相関が認められた。疾患別でみると、膜性腎症や MCNSではIgA腎症やループス腎炎など増殖性疾患に比しAutophagyの出現が有意に増加していた(p = 0.037)。以上の結果より、腎組織において恒常的にある一定レベルのAutophagyが生じているが、糸球体ではPodocyteに出現頻度が高い。MCNSではPodocyteのAutophagyと尿蛋白、足突起癒合率が相関している事が示された。PodocyteのAutophagy誘導機構と足突起融合機序の連関を更に解明することが重要であることが示唆された。
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