研究課題
1. メサンギウム細胞障害時のAGE非依存的Smad1誘導・活性化調節分子の同定前年度の検討において、得られたSmad1発現調節に関わる老化関連分子群の機能をより明確にするために、強制発現やknockdownによって、Smad1のリン酸化、Sox9の発現誘導、核への転送効率、リポーターアッセイを、野生型あるいはSmad1-過剰発現マウス由来のメサンギウム細胞を用いて行い、Smad1の発現誘導はp16の発現レベルと平行していることが明らかとなり、Smad1たんぱく質の発現を制御する機構に加齢によるゲノム修飾の存在が示唆された。2.Smad1/BMP4 conditional KO/Tgマウスを用いた生理的加齢、早期老化による腎機能低下抑制治療抑制治療の検討Smad1, BMP4とも正常の発生に必須の分子であるため、成体としたあとタモキシフェン投与により各分子の発現を操作できるマウスを用いることとした。コントロールのタモキシフェン非投与マウスとともに、経時的な観察を行った。前年度に検討した尿中Smad1の変化を指標に、ネフロン喪失の速度にどの段階より差異が生じるかを検討したところ、組織学的にBMP4が出現してから、4-6wkのちに急速な変化が観察された。これは、BMP4単独の効果ではなく、他のBMP4修飾因子(coactivator, corepressorなど)の影響が重要であると示唆する結果であった。
2: おおむね順調に進展している
タモキシフェン誘導型BMP4Tgマウスでは、原因は不明であるが、下痢が著明な個体が多く、そのため尿の排泄量が少ないため、尿の解析がやや困難な場合がある。連日、尿の採取を行うも、下痢による混入とわけることが難しく、膀胱穿刺などによる予定外のステップが必要となり、それでも十分な尿量が採取できず、一度のサンプルですべての項目を測定できず、そのため、個体数を増やして、再現性の確認に努めている。それ以外は予定通り進行している。
主に、生理的なネフロン喪失発症の機序を解明のためのメサンギウム細胞障害時のAGE非依存的Smad1ならびにALKs誘導・活性化調節分子の同定、Smad1, BMP4のconditional KO/Tgマウスを用いた生理的加齢、早期老化による腎機能低下に対する分子治療の標的としての可能性に関する解析を行いつつ、生理的老化および早期老化によるネフロン喪失の進行過程の分子機序を解明する。
染色用抗体を検討していたところ、マウスでは機能していた抗体が、ヒトの組織ではうまく機能していなかったため、新たにヒト組織にて適当と思われる抗体を過去の文献を元に探して注文したところ、国内在庫がなく、輸入手配となり、年度をまたぐこととなった。新たな抗体はまもなく入荷予定にて、入手次第、ヒト組織での検討を行う予定としている。
すべて 2013
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Clin Exp Nephrol
巻: 17(6) ページ: 819-826
10.1007/s10157-013-0778-8