研究課題
昨年度に明らかにした鉄摂取制限による糖尿病性腎症進展抑制効果について引き続いてその機序を解析した。8週齢のdb/dbマウスに正常食を与えた群、低鉄食を与えた群ならびにコントロールとして正常食を与えたdb/mマウスを用いて比較した。鉄摂取制限群において血圧低下が認められたため、血管内皮機能に焦点を当てて検討した。大動脈ならびに腎臓のウエスタンブロットでは3群間に内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)のタンパク発現量には変化を認めなかった。リン酸化は正常食db/dbマウスで低下していたが、低鉄食db/dbマウスでは対照群程度まで回復していた。また接着因子ICAM-1, VCAM-1の発現は、正常食db/dbマウスでは増加しており、それらは低鉄食db/dbマウスにおいて対照群程度まで改善していた。鉄摂取制限による糖尿病性腎症進展抑制に内皮非依存的な血圧低下作用が関与するか、ヒドララジンを用いて検討した。ヒドララジン投与によって、鉄制限食群程度に血圧は低下したが、低鉄群db/dbマウスでみられた尿中アルブミン排泄量低下は、ヒドララジン投与正常食db/dbマウスでは認められなかった。よって鉄摂取制限による糖尿病性腎症進展抑制には血圧低下と独立した血管内皮機能改善効果が一部関与していることが示唆された。腎線維化も糖尿病性腎症を含めた慢性腎臓病の病態に影響するが、上記のモデルでは明らかな腎線維化がみられなかったため別モデルを用いて検討を行い、鉄除去が腎線維化抑制に有効であることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に予定した鉄摂取制限による糖尿病性腎症抑制効果について、血管内皮機能観点からも改善機構を明らかにできた。ただしマイクロアレイ解析について、サンプリングのタイムポイント設定の問題から着手できなかった。
鉄制限によって変化する因子群についてのマイクロアレイ網羅的解析を行う予定であったが、糖尿病性腎症や一側尿管閉塞腎線維化などの腎疾患モデルにおいて尿細管に種のタンパク質Aの発現が増強していることが確認できた。よって当初の予定を変更して、そのタンパク質の病態における機能を解析する予定である。
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