研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、iPS細胞技術を利用し、iPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞を生体に移植することによって、腎性貧血の生理的な改善を可能にすることである。平成24年度は、ヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞を分化誘導する技術を確立し、分化した細胞が発現するエリスロポエチンについて評価・検討することを計画していた。研究の結果、ヒトiPS細胞に種々の刺激を加えることで、エリスロポエチン産生細胞を分化誘導することに成功した。産生細胞の培養液または細胞溶解液のエリスロポエチン発現を、PCR、Western blot法、ELISAを用いて確認したところ、分化誘導されたエリスロポエチン産生細胞は、ヒトエリスロポエチンをmRNAおよび蛋白質レベルで発現していた。また産生されたエリスロポエチンは細胞培養液中に分泌され、生体内と同様に低酸素下で培養すると、エリスロポエチン分泌はさらに増加していた。ヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞を分化誘導したという報告は、私が検索した限りこれまでない。そのため、平成24年度の研究成果で確立したエリスロポエチン産生細胞の分化誘導法は、基礎研究においてはエリスロポエチン産生・分泌の機序解明に大きく貢献すると考えられ、また臨床応用としては、渇望されるヒトiPS細胞を用いた生理的な腎性貧血治療の可能性を示唆した。現在、産生されたエリスロポエチンの機能評価と、iPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞を生体に移植すること目的に研究を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度に予定していた研究内容については、ほぼ全て終了しており、概ね予想された結果を得ることができた。得た知見を参考にし、また測定系などを流用し、平成25年度に計画している研究内容に関しても、一部予備実験を開始し、既に準備を行っている。現時点では、研究計画の立案に際し、問題となると予想された点についても順調に遂行できている。そのため交付申請書に記載された研究目的に対する達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。
これまでの研究計画に関しては、おおむね順調に推移している。平成25年度以降は、ヒトiPS細胞から分化誘導したエリスロポエチン産生細胞の機能評価と、モデル動物への移植実験を計画している。機能評価としては、平成24年度に構築したシステムを利用し、既に予備実験を開始している。予備実験から得られた結果からは、分泌されたエリスロポエチンは十分な機能を有していることを示唆している。この予備実験結果の確証を得るように平成25年度は研究を継続して行う。研究を遂行する上で課題が生じた場合には、研究計画書に挙げた対策に沿って研究を行う予定である。
平成25年度は産生されたエリスロポエチンが生理的な機能を有するか確認することを目的にしている。そのため血球分化の標準的評価法であるコロニーアッセイを用いて、骨髄前駆細胞にエリスロポエチン産生細胞溶解液や培養液を反応させ、赤血球系譜に効率よく分化を誘導するかを評価する。臨床で用いられているエリスロポエチン製剤と比較し、力価の強いエリスロポエチンを分泌させる条件を検討することも予定している。 平成25年度は、これらの実験を効率よく行うために、設備備品としてスペクトロフォトメーター(Bio-Rad 170-2525)を購入予定である。また測定に必要である試薬や抗体、実験消耗品の購入も予定している。予備実験の結果からは、申請した予算で研究を遂行できるものと考えている。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (2件)
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
巻: 32 ページ: 257-263
10.1161/​ATVBAHA.111.240697
Am J. Hypertens.
巻: 25 ページ: 604-611
10.1038/ajh.2012.1.
Circulation.
巻: 125 ページ: 1402-1413
10.1161/CIRCULATIONAHA.111.064097.
J. Pharmacol. Sci.
巻: 119 ページ: 131-138
10.1254/jphs.12031FP
巻: 119 ページ: 359-367
10.1254/jphs.12075FP
PLoS One
巻: 7 ページ: e41896
10.1371/journal.pone.0041896.
J Am Soc Nephrol
巻: 23 ページ: 1847-1856
10.1681/ASN.2012010078.
Clin Exp Pharmacol Physiol.
巻: 39 ページ: 858-863
10.1111/j.1440-1681.2012.12001.x.
Tohoku J Exp Med.
巻: 228 ページ: 333-339
10.1620/tjem.228.333